テレビのドキュメンタリー番組で人気に火がつき、「奇蹟のカンパネラ」で知られる、ピアニストのフジコ・ヘミングさんが、4月21日に亡くなった。92歳だった。2日、公式ホームページで発表された。
公式HPによると、ヘミングさんは昨年11月に自宅で転倒。リハビリに励んでいたところ、今年3月に行った検査で「すい臓がん」と診断された。療養を続けていたものの4月21日に容体が急変したという。
3月には米・ニューヨークのほか、日本公演が予定されており、再び「ラ・カンパネラ」を弾きたいと、リハビリを続け、病室でピアノを弾いていたこともあったという。
ヘミングさんは、ナチス政権下のベルリンで、スウェーデン人建築家の父と日本人ピアニストの母との間に生まれた。日本で育ち、17歳でデビュー・コンサートを開き、天才少女として話題に。東京音楽学校(現・東京芸大音楽学部)に入学した。その後、ベルリン音楽学校を首席で卒業。リストとショパンを弾くため生まれてきたピアニストと称されたが、1979年ごろに風邪のため失聴した。
95年、母の死を機に日本に帰国、98年再起の舞台を踏む。99年2月、聴覚を失いながらもピアニストへの夢を追い続けた半生がNHKのドキュメンタリー番組「フジコ-あるピアニストの軌跡」として紹介され、同年8月「奇蹟のカンパネラ」でCDデビュー。クラシックでは異例の100万枚を超えるセールスとなった。
HPによると、葬儀は本人や親族の遺志により、近親者で執り行ったという。「とても美しく穏やかな表情での旅立ちでした。診断後は、みなさまに心配をかけたくないという本人の希望により、公表は差し控えさせていただきました。公演を楽しみにしていただいたファンのみなさま、主催者さまには多大なるご迷惑ご心配をおかけしましたことを、心よりお詫(わ)び申し上げます」とつづった。