リニア中央新幹線建設のため、工事が進められている岐阜県瑞浪市で、農業用水などに使う地下水が低下している問題。JR東海は、掘削工事を中断して、22日に会見を開き、現時点で工事の再開めどは立っていないことなどを明かしました。

岐阜の山間にある瑞浪市・大湫町。農業用にも使われるため池が、今月に入り、一面にひびが入り、完全に干上がっていました。22日は、かろうじて水はありましたが、ため池とはいえない状態です。

今月から田植えを始めた岐阜県のコメ農家・小栗啓輔さん(45)。田んぼ近くのため池の水位が、突然、大幅に低下しました。
小栗啓輔さん:「(Q.これだけのひび割れを見たことは)見たことないですね。この山側というか、こっちの方だけ、今年は水が引くのが早い」

原因とみられているのが、リニアのトンネル工事です。
小栗啓輔さん:「ここは下をトンネルが通過していくだけで、大湫町にとっては、リニアによる大きななにか(恩恵)は、多分ないと思うので、今のところ、もらい事故的な感覚というのがぬぐえない」

東京・大阪間を1時間で結ぶ世界最速のリニア中央新幹線。そのルートは、瑞浪市の地下を横断します。トンネル工事が進められるなか、今年に入り、14カ所の水源や井戸で水位の低下が発覚しました。

JR東海は、この時点では、工事を進めながら調査をする予定でしたが、20日、直ちに工事を中断すると発表しました。
JR東海・丹羽俊介社長:「大湫町のみなさまの不安と、岐阜県および瑞浪市から要請をいただいたということをふまえ、より慎重な対応として、現時点でトンネルの掘削を、一時、中断して、水平ボウリング等による地質調査を実施するというふうにした」

JR東海側も水位の低下はトンネル工事が原因だとみていて、亀裂をふさぐための薬液を注入したとしています。ただ、工事再開のめどは立っていません。
JR東海・丹羽俊介社長:「(Q.新幹線のトンネル工事では地下水の流出はつきものとして考えていくのか)モニタリングの結果、減水などの兆候が認められて、水利用への影響の恐れがある場合には、お住まいの皆さまの生活に支障をきたさぬよう応急措置を実施して、因果関係を調査して確認したうえで、必要な場合には、応急対策を実施していくという手順を定めている。今回の大湫町の件でも、2月下旬に観測用井戸で地下水の低下傾向がみられたときから、いま申し上げた手順にそって、対応をおこなっているところ」

この地域の至る所で、井戸水が枯れていました。河川がないため、井戸水や雨水を大切に使ってきたそうです。。
長谷川達二さん(78):「本当に大事にしてる水だから。一度も切れたことがないもんで。それは元に戻してもらわないと。ここに水を補強しようとか、そういう問題ではない」

JR東海は、代わりの水源を確保するため、新たな井戸の設置などを進めています。

こうしたなか、自治体のトップが22日、今後の対応について、緊急会議を開きました。
瑞浪市・水野光二市長:「大湫の皆さんが強く言われるのは、対策をいろいろやっていただくのはありがたいけど、“何とか元の自然に戻せ”ということは、強く大湫の皆さんが言っているので、私もそうしてほしいと思っております」