中国・北京で開催される北京国際モーターショーで、ランボルギーニ新型「ウルスSE」が世界初公開されました。「レブエルト」に次ぐランボルギーニのPHEV第2弾はどのようなパフォーマンスとなるのでしょうか。

ランボルギーニのベストセラーモデルにPHEVが登場

  ランボルギーニの新型SUV“ウルスSE”が北京モーターショーで発表されました。

 これに先立ち、私はランボルギーニ本社があるイタリアのサンタガータ・ボロネーゼでウルスSEの説明会に参加したので、その様子をご紹介しましょう。

 ウルスSEは、従来型のウルスをPHEVに改めた点に最大の特徴があります。

 これはランボルギーニが掲げる電動化戦略“ディレッツィオーニ・コル・タウリ”のに従ったもので、2024年中には全モデルをPHEVにすることがその目標のひとつとして示されています。

 2023年、発表された同社のフラッグシップモデルである「レヴエルト」が同社のPHEV第1弾で、今回のウルスSEが第2弾。そして2024年中にはウラカンの後継モデルがPHEVに生まれ変わったところで、“ディレッツィオーニ・コル・タウリ”の第2フェーズは終了します。

 ちなみに、“ディレッツィオーニ・コル・タウリ”の第1フェーズは「エンジン車の最後を飾る記念モデルの投入」で、こちらはすでに完了。今後に控える第3フェーズは、2020年代後半に「(レヴエルト、ウルス、ウラカン後継モデルに続く)第4のモデルをBEVとして投入」することにあります。

 スーパースポーツカー・ブランドのなかで、ここまで明確に電動化の道筋を発表しているのはランボルギーニだけといって間違いないでしょう。

 もっとも、3モーター方式のプラグインハイブリッドシステムを搭載し、ボディ構造、エンジン、ギアボックス、サスペンションのすべてを一新したレヴエルトに比べると、ウルスから新型ウルスSEへの変化はごく小さいもののようにも思えます。

 たとえば、ボディの基本構成や4リッターV型8気筒ツインターボエンジンは基本的に従来型のキャリーオーバー。ハイブリッドシステムにしても、従来からの8速AT内部に192馬力/483Nmの強力なモーターを内蔵したパラレル・ハイブリッド方式で、特別、目新しいものはありません。

 そのいっぽうで、説明会で強調されていたのが3.13kg/psのパワーウェイトレシオでした。直近まで販売されていたウルスSは3.3kg/psだったので、これに比べれば明らかな進歩。一般的に重量が重くなりがちなPHEVで、パワーウェイトレシをむしろ改善したのは立派といえます。

 この結果、0-100㎞/h加速はウルスSの3.5秒から3.4秒へ、0-200km/h加速は12.5秒から11.4秒へと短縮。最高速度も305km/hから312km/hへと一気に7km/hも伸びました。

新型ウルスSEには電子制御式油圧多版クラッチ式の4WDを採用

 ただし、新型ウルスSEの本当の見どころはこうした動力性能の進化だけに留まりません。

 なぜなら、駆動系が抜本的に見直されたことに伴うハンドリングの変化のほうが、動力性能の進化をはるかに上回るインパクトがあるといっても過言ではないからです。

北京モーターショーで世界初公開されたランボルギーニ新型「ウルスSE」のインテリア

 これまで歴代ウルスの4WDシステムには、センターデフにトルセン型を用いてきました。純メカニカルなトルセン型デフは反応が素早く、安定した操縦性を得やすいという特徴があるいっぽうで、メカニカル方式のため制御の変化幅が狭く、またシステムが能動的に、つまり自ら進んで制御内容を変更できないという弱点がありました。

 そこでランボルギーニが投入したのは電子制御式油圧多版クラッチ方式です。

 もっとも、このハードウェア自体は30年以上も前から市販車の4WDシステムに用いられていたもので、目新しくはありません。では、ウラカンSEでなにが特徴的かといえば、このシステムを制御するソフトウェアに最大の秘密は隠されているといいます。

 ランボルギーニは1986年に初の4WDモデル“LM002”を発売。これに続いて当時のフラッグシップモデルであるディアブロにも4WD仕様を設定するなど、独自に4WD技術を開発していました。

 この流れを加速させたのが、アウディによるランボルギーニの買収。クワトロの名でお馴染みの4WDモデルを1980年から世に送り出してきた“スペシャリスト”とタッグを組んだことで、ランボルギーニの4WD技術はさらに進化していったのです。

 そうした努力から誕生したのが、4WD制御に予測技術を取り入れることでした。

 これを初めて採用したのが2019年に誕生したウラカンevoで、ドライバーの運転操作からドライバーの意図を汲み取り、たとえばドリフトを期待している操作と判断された場合には4WD、サスペンション、トルクベクタリングなどの制御を駆使してドリフトが起きやすい状態を作り出すことを可能としたのです。

 この技術をさらに進化させたのが前述のレヴエルトで、新型ウルスSEはこれに続く予測技術採用製品の第3弾。SUVに初めて導入された予測制御付き4WDがどんな走りをもたらすのか、楽しみで仕方ありません。

 また、新型ウルスSEではリアデフを駆動力制御方式のアクティブトルクベクタリング式から左右のロック率を可変できるE-Diffに換装。電子制御式油圧多版クラッチと相まって、ランボルギーニでなければ実現できないハンドリングを生み出したといいます。

 前後のデザインにも手直しが入ったほか、インテリアや操作系にも改良が施された新型ウルスSE。見た目の変化は控え目ですが、ステアリングを握った際の印象は大きく生まれ変わっていることが期待されて、とても楽しみです。