台湾でサイバー感全開のバスを発見! いま電動化に伴ってバスデザインの進化がとまらない!!

この記事をまとめると

■台湾の台北市内で見たことのない路線バスを見つけた

■見たこともない路線バスは中国系メーカーの合弁会社が手がけたBEVバスだった

■BEVが増えることで人の話し声が気になったことに時代の変化を実感した

台湾・台北で見つけた見たこともない姿のBEVバス

 先日、台湾経由でタイの首都バンコクに取材に出かけた。帰路経由地となる台湾の台北市郊外にある桃園空港に降り立ち、台北市に3日ほど滞在した。宜蘭にある計程車(タクシー)博物館と猴トンというネコがたくさんいる村へ行くためであった。

 2024年4月3日、台湾は大きな地震に見舞われた。台北近郊の花蓮市周辺がとくに大きな被害を受けたとして連日ニュースに取り上げられていた。筆者はこの花蓮市に近い計程車博物館に4月1日、そこよりはやや離れているネコ村を4月2日に訪れている。

 ネコ村は台湾に滞在するときには必ず寄っているお気に入りスポット、かつて炭鉱で栄えた小さな村にたくさんのネコがおり、世界中のネコ好きが集まっている。また、計程車博物館は2019年に個人愛好家が2億円かけてオープンさせたという話題のスポットであり、タクシー好きの筆者としては、今回初めて訪れることができた場所。

 花蓮市の被害状況を見ていると両方とも被災状況が気になって仕方ないがはっきりしていない。

 地震が発生していたとき、台北中央駅近くの雑居ビル6階のホテルの自室で帰国準備をしていた。現地時間午前7時58分ごろ、スマートフォンから聞きなれない発信音が聞こえてきた。画面を見ると漢字だらけのテキストメッセージが記されていた。わかる範囲で漢字を「ひろい読み」すると、日本の地震警報と同じようなもので、「大きな地震が発生する」といったことが読み取れた。

 その直後ビルの6階ということもあり、かなり大きくビルが揺れだした。フロントデスクの女性スタッフの「キャー」という悲鳴も聞こえてきた。

 幸い空港は閉鎖されることなく、帰国のために乗る飛行機も定刻通りに離陸予定であることを知り、空港に向かった。台北市内の地下鉄などが運休になっているとのこともあるのか、台北市中心部へ向かう高速道路が渋滞していた。空港内に入ると一部天井が崩落するなどの被害は出ていたものの、飛行機は定刻に飛び立ち、無事に成田空港に着陸した。

 前述した2カ所を訪れながら、空いた時間を使って台北中央駅近くにあるいつもの場所で通るクルマの定点観測を行った。じつは2023年12月にも台湾経由でタイへ取材に出かけている。そのときは帰国時、タイからの飛行機が到着して台湾で成田空港に向かう飛行機に乗り換えるまで8時間ほど時間が空いてしまったので、一度台湾に入り台北市の同じ場所で定点観測を行っている。

 今回定点観測をはじめてしばらくは、前回とあまり変化を感じなかったのだが、次の瞬間「あれはなんだ!」という路線バスを見つけた。2023年12月の時点では見たことのない先進的なBEV(バッテリー電気自動車)路線バスが走ってきたのである。路線バスといえば「真四角」な印象を持つが、それをさらに先鋭化させたような近未来的なフォルムで、そのBEV路線バスのボディサイドには「FOXTRON」と書かれていた。

 調べてみると、FOXTRONは「FOXTRONビークル・テクノロジー社」という台湾のBEVメーカーとのこと。台湾の有名企業グループ・ホンハイ(鴻華)の関連企業と、現地で日産自動車のパートナーとなる「裕隆(ユーロン)汽車」の合弁企業となるようだ、そしてこのバス車両は「モデルT」と呼ばれているそうだ。

 車両自体は2022年に量産車両が高雄市のバス事業者に納められているとのこと。調べてみると、すでに台北市内の事業者へは2024年2月に納車が始まっているようである。ちなみにこのモデルTは日本のグッドデザイン賞を受賞している。モデルTのような、あっと思わせるプロダクトは、鴻海(ホンハイ)という異業種参入のシナジー効果なのかなとも考えている。

 我慢できなくなり、どこへ行くのかもよくわからないまま、車内がガラガラのFOXTRONバスにICカードをタップして、車内がガラガラのFOXTRONバスに乗り込んでしまった。

BEV化が着々と進む海外の路線バス

 車体が極端にスクエアなので、車内も当然極端にスクエアな空間が広がっていた。なかなか先進性を感じる車内なのだが、一部降車ボタンが日本の路線バスのものの20年以上前ぐらいの昭和を感じさせるアンバランスなものがついていたことに驚かされた。

「BEVだから先進的で未来志向」というつもりはないが、多くのメーカー、とくに新興メーカーではそのイメージの強いモデルをラインアップさせている。台北市ではすでにFOXTRON以外のBEV路線バスも走っているが、いずれも既存のICE(内燃機関)の路線バスのイメージを引きずっており、筆者以外でもFOXTRONバスのデザインに目が留まるはずである。

 日本ではBEVではなくFCEV(燃料電池車)路線バスとなる「トヨタSORA」が都市部を中心に走り出している。FOXTRONよりさらに挑戦的で未来志向なデザインとなっており、たとえば東京を走るバスがすべてSORAならば、街の風景はかなり変わるはずである。

 それを実現しようとしているのが韓国の首都ソウル市。ソウルでは路線バスのBEV化がかなり進んでおり、当たり前のようにBEV路線バスがやってくる。そして、複数メーカーの車両がSORAに近いデザインで統一されている。

 韓国の路線バスは運転士が「武闘派」だったりしてかなり荒っぽい運行をしていたこともあり、観光客にはなかなか使いこなせない乗り物であったが、車両電動化とともに使いやすさも各段に向上。筆者が2023年に乗った限りでは運転士からも武闘派色はほぼ消えていた。

 韓国ヒョンデには、現状ではBEVはなくディーゼルエンジンを搭載するが、それこそコンセプトカーをそのまま市販モデルにしたような「スターリア」というミニバンがある。そして、ソウル市内を見ているとこのスターリアの救急車や幼稚園児バスなど「はたらくクルマ」もたくさん走っている。

 ヒョンデの乗用車はかなりエッジの利いたデザインのものが多く、グレンジャーやソナタがタクシーやパトカーなどでも走っている。

 そんなクルマが多く街を走っているので、日本車はもともと手堅いクルマ作りをするので仕方ないのだが、ソウル市内の方が「より先進的な街」に見えてくる。「先進的」などあくまで個々人の主観の問題となるのだが、韓流ドラマなどが好きな人の間では、韓国の方がより先進国に感じる人が多いというのも、知らず知らずに劇中のそのようなシーンを見て感じているのかもしれない。

 デザインうんぬんは抜きにしても、中国広州市では2019年に市内の路線バスのBEV化が加速した。2019年に広州市内を歩いていると、クルマ由来のノイズというものがかなり減っていた。そのなかでBEV路線バスだけではなく、BEVタクシーも増えていたので、クルマ由来のノイズがかなり低減され、街を歩く人たちの話す声が目立っていたのである。中国の人の話す声は大きいので、歩いているとクルマ由来の騒音よりも、そっちのほうが気になってしまった。

 見た目のデザインはあくまで個々人の主観とはなるものの、筆者のような凡人から見れば、確かにBEVの多くはエクステリアだけではなく、インテリアも先進的でワクワクしてしまうものが多い。割高なBEVを買ってもらうためには、そのような「仕掛け」は必要とも考えているのだろう。

 海外の街を歩いていると、見える風景や聞こえるものが日本とは異なることに驚きを感じる。「100年に一度の変革」というものはこうゆうものなのかなあと筆者は感じている。