テレビ朝日系ドラマ「Destiny」(火曜午後9時)は、石原さとみが横浜地検中央支部の検事・西村奏(にしむら・かなで)役で、実家に放火した容疑者でかつての恋人・野木真樹役の亀梨和也の取り調べに当たって、真実を追究するラブ・サスペンスの傑作である。なにより、石原さとみが内面の感情の懊悩を深い演技力で魅せる。これまでの出演映像作品のなかで明るい健気な人物を演じてきた、俳優イメージの転換を図ろうとしている。

ドラマ「Destiny」で、石原さとみは、俳優としての新たな扉を開こうとしている(テレビ朝日ホームページより、以下同)

「スターは自分のブランドを自らが創っていくもの

 公開中の映画「missing」(吉田恵輔監督)のなかで、石原さとみは、6歳の娘が失踪した事件に巻き込まれた母親役を演じている。石原がパートタイムで働くミカン農園や夫とその勤務先の漁業協同組合の人々に支援されながら、ビラを巻き、地元のテレビ局のローカル番組にも出演して懸命に娘を探す。

 半年が経ち、2年が経っていく。髪の毛には枝毛が混じる。娘への思いと、発見できない焦燥感と感情の噴出が見事である。この映画は石原さとみが、吉田監督にメガホンを握って欲しいと願ってから約6年をかけて完成した。

 AKBを成功に導いたプロデューサである、秋元康は「スターは自分のブランドを自らが創っていくものだ」と、語っている。欅坂46の永遠のセンターだった平手友梨奈が、別の事務所に移って、仕事のえり好みをしている、と批判されたときの言葉である。秋元は「美空ひばりもそうだった」という。

 ドラマは、信州の大学で法律を学んでいた奏(石原)と野木(亀梨)、及川カオリ(田中みな実)、梅田祐希(矢本悠馬)、卒業後に梅田と結婚する森知美(宮澤エマ)が絡んだ事故が発端である。奏と野木は恋人となり、野木に心を寄せるカオリは自分で運転する自動車に野木を誘って、道路からクルマが転落して亡くなる。

大学時代にいつも一緒にいた5人は、ある事故をきっかけに離れ離れになる

 野木は助かったが、奏をはじめとする友人たちの前から姿を消してしまう。カオリが運転していたハンドルには、野木の指紋も見つかっていた。