劇場版最新作となる映画『帰ってきた あぶない刑事』の全国公開(24日)を前に、「あぶデカ」シリーズ38年の歴史を深掘りすべく、総勢50人の証言を集めた書籍『あぶない刑事インタビューズ「核心」』(立東舎)が発売された。1980年生まれのライターで、精力的に映画やテレビドラマについての執筆を続けている著者の高鳥都氏に話を聞いた。

 俳優では、ダブル主演の舘ひろしと柴田恭兵をはじめ、浅野温子、仲村トオル、ベンガル、長谷部香苗(初期からメイン監督を務めた長谷部安春氏の娘)の計6人が登場。スタッフでは、監督、脚本家、プロデューサー、製作主任から美術、音楽、さらには装飾、記録、編集、整音、メイク、技斗、カースタントなどに至るまで、細かい役割に分けた対象者を各地で直撃取材。高鳥氏は「なるべく現場の声を多く集めようと思いました。その方が多様性もあって面白い」と意図を説明した。

 取材期間は今年2月から3月までの約1か月半。高鳥氏は「実際にインタビューしたのは48人。『あぶない刑事』の製作会社であるセントラル・アーツの代表を務めた黒澤満プロデューサーと技斗の高瀬将嗣さんは故人なので、それぞれ過去の取材と原稿の再録です。黒澤さんの晩年に4回インタビューさせていただく機会があったのが、今回の本を作った最大のモチベーションですね。全集中してやりました」と振り返る。

 同氏は本書を手にして「448ページと分厚い割には、作品と同様に〝軽さ〟がある。また、『アドリブを含めた自由なノリ』が撮影現場に広がったことを各人が証言していますが、計算づくではない、ラフでスピーディな良さと言いますか、そういう早撮りのノリがこの本にもあるかもしれません。発売前に重版がかかって評判も上々です」と実感を込めた。

 では、「あぶデカ」の見どころを〝令和のビギナー〟に勧めるとすれば…。

 高鳥氏は「肩の凝らない娯楽アクションとしての心地良さですね。1話完結だし、事前知識なしで気軽に楽しめます。港ヨコハマを舞台にした舘さんの『ダンディー鷹山』、柴田さんの『セクシー大下』(※いずれも役柄の呼称)というバディ(※相棒もの)の魅力を味わってもらいたいです」と解説した。

 取材中のエピソードも数々ある。その一部を紹介すると、神奈川県内で実家の美容室を継いだ元メイク担当の男性を取材した際、自宅リビングに劇場版のポスターが貼ってある光景を目の当たりにした高鳥氏は「あぶデカ愛」にグッときたという。

 さらに、同氏は「仲村トオルさんがインタビューの途中で、ふいに涙を流され、それにはびっくりしたのですが、ご本人も『まさか「あぶデカ」の取材で泣くとは思わなかった』とおっしゃった」と証言した。

 仲村はなぜ泣いたのか?大いに気になるところだが、新刊が世に出たばかりのタイミングで〝ネタバレ〟は御法度だ。高鳥氏も「その理由はぜひ本書を読んでいただきたいです」と付け加えた。ただ、ヒントを挙げるならば、「現場で向き合った〝ある恩師〟の厳しさと優しさ」。仲村は自身に向けられていた恩師の〝まなざし〟について記憶をたどるうちに感極まったというわけだった。

 一人の人間として、スター俳優が漏らしたリアルな感情もすくい上げたインタビュー。作品を支えた人たちの息づかいが伝わる一冊だ。

(デイリースポーツ/よろず〜ニュース・北村 泰介)