あたりまえに毎日のルーティンを送れることが奇跡

50代の頃、娘のロンドン留学をきっかけに、大崎さんのひとり暮らしがスタートしました。

「娘の留学は、半年の予定でしたが、現地で就職、国際結婚し、そのまま暮らしています。ですから、私のひとり暮らしはもう50年近くになります。寂しいといえばそうかもしれません。ですが、おひとり様な分、ひとりで気ままに生活できています。それは健康だからこそだと、この年になってすごく実感しています。健康であるからなんでもできる。これからは健康でいることが私の仕事だと思っています」

毎日の太極拳や健康麻雀が大崎さんの健康法です。加えて、昨年、あることがきっかけで、病気に対する意識が変わりました。

「昨年、大腸がん検診で異常が見つかり精密検査を受けることになりました。結果が出るまでのあいだはもう不安で不安で……。眠れぬ夜を過ごしました。そして、結果は異常なし。ほっと安堵したのと同時に、病気について考えさせられるきっかけになりました」

というのも、もしも今、ステージ4のがんになったとしたら、91歳の私に何ができるのだろうか。ただ、死ぬのを待つようなことはしたくありません。

だったら、今は健康であるように気をつけ、痛くなったり不調があったら、検査をしたり病院に行こうと決めました。 

「病気になったら、どうあがいても病気のことばっかり考えちゃう。そして、人にも迷惑をかけちゃう。人に迷惑をかけずにいるというのも私の大切な仕事。改めて、健康でいるということは幸せなことだと感じています」

60歳の頃、洗礼を受けてクリスチャンに。ダイニングのコーナースペースを祭壇にしている 毎晩の晩酌は1日の楽しみ「今でも続けています」

「お酒は健康のバロメーター。おいしくお酒をいただけるってことは健康な証拠です。昔は深酒する日もあったけど、健康を意識し始めてから、缶ビール2本ぐらいまで。適量なら毎日飲んでもいいことにしています」

この日の晩酌のお供は、自家製ぬか漬けとセロリの和え物。お盆に盛りつけて、ちょこちょこ食べながら飲む時間は至福のひととき

好きなお酒を我慢してやめることはストレス。だからこそ、節制して適度な量を楽しんでストレスをためないことも大崎さんのモットーです。さらに、自家製のぬか漬けなどのおつまみは、きれいなお皿に盛ることも大事なルーティーン。理由は気分が上がるから。ひとりでも、自宅でも、特別感のない普通の毎日に、気分を上げる工夫がかいま見れます。さらに、毎日食べているのが米ぬかをいった「いりぬか」。

「毎日、いりぬかをスプーン1杯、ヨーグルトにかけて食べているから、玄米を食べているのと一緒。玄米は硬くて食べにくいけど、粉末のいりぬかは食べやすいし、健康にもいいですよね」

最近は、たれがちな目のまわりのスキンケアに力を入れています

たとえ、早朝の太極拳でもノーメイクで出かけることはありません。毎朝のメイクは、眉毛を描き足し、目尻にアイラインを引くだけ。シンプルながらも、何十年も欠かさない大事なステップです。

「ただ、この年になると、目がたるんできて思うようにアイラインが引けなくて。そこで始めたのが目の周りのスキンケア。入念に続けたら、これまで感じていたアイラインの引きにくさがなくなりました。続けるって大事ですね。いくつになっても、スキンケアの効果が感じられるのはうれしい!」

こうやって、日々の暮らしの中の小さな手応えを感じてアップデートすることで、心地よさを丁寧に選択していく大崎さん。

「Xでいろんな人とコメントのやりとりをしていると、日本人は人の目を気にしすぎるなあと感じます。人のことを気にするとそれだけでストレスになる。ストレスから病気にだってなる。だから、人のことは気にせず、自分が好きなことをやるといいと思います。わが道を行くでいいのです」

PROFILE 大崎博子さん

昭和7年(1932年)生まれ。78歳から始めたX(旧ツイッター)のフォロワー数は20万超え。楽しみは毎晩の晩酌と3日に1回ほどのペースで通う健康麻雀。著書に『90歳、ひとり暮らしの知恵袋』(宝島社)ほか。『人生後半のひとり暮らしを穏やかに楽しむ』(主婦と生活社)では、肩ひじ張らずに電子ツールと向き合っている大崎さんの様子が詳しく紹介されている。

取材/森田有希子(smile editors) 撮影/森本綾