リース大手は太陽光パネルのリユース、リサイクルの事業化に向けた動きが活発だ。背景にあるのは今後予想される太陽光パネルの大量廃棄。2012年に始まった再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)で設置された太陽光パネルが30年代以降に順次寿命を迎え、大量の太陽光パネルをどう処理するかが課題となっている。発電事業やリースで大量の太陽光パネルを扱うリース会社にとって避けて通れない問題だけに、各社の戦略が問われている。(石川雅基)

再生実現へ今秋にも実験開始

「自社が作ったモノや使い終わったモノがどうなるかに無関心ではいられない時代になっている」。リース事業協会の会長を務める三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の橘正喜社長は多くの製品を扱うリース会社のビジネスについてこう指摘する。これまで「リース会社は3R(リデュース、リユース、リサイクル)を長年けん引してきた」(橘社長)と自負を持つ。特にリース大手は太陽光発電事業者として大量の太陽光パネルを扱っているため、太陽光パネルのリユース、リサイクルにおいても果たす役割が大きいとみる。

SMFLは9月にも住友商事などと太陽光パネルのリユース、リサイクル事業の実現に向けた実証実験に乗り出す方針。1年間の実証実験で事業化の方法を探る。

実証実験ではリサイクル事業者のアビヅ(名古屋市港区)が、SMFL子会社で太陽光発電事業を手がけるSMFLみらいパートナーズなどから使用済み太陽光パネルを3000枚程度引き取る。検査機器を使ってリユース可能と判断した場合は太陽光パネルを発電事業者などに売却する。リユース不可と判断した場合はアビヅがアルミニウム枠やガラス、樹脂などに分別して原料メーカーに売る。実証実験で得られたデータを分析・活用し、事業化への課題を洗い出す。スケールアップへの対応策なども検討する。

事業化にはジョイントベンチャー(JV)を設立する想定。東海、関東地方に加え、東北、九州、中国地方などで事業展開する考えだ。

SMFLリマシーン営業部の力石健太郎副部長は、実証実験について「太陽光発電事業者(SMFLみらいパートナーズ)と全国規模のネットワークを持つリサイクル事業者(アビヅ)が枠組みに入っていることがポイント」と強調する。実証実験を踏まえ、事業化できると判断した場合は「2030年代に廃棄パネルのシェア5%以上の獲得を目指す」(SMFLの力石健太郎副部長)方針だ。国内で太陽光発電事業を手がける大手企業からも太陽光パネルを集める考え。

リユース品を国内販売 自治体と連携、売電実証

太陽光パネルの寿命は20―30年程度。FITの開始に合わせて10年代前半に大量の太陽光パネルがさまざまな地域に設置されたため、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の試算によると、太陽光パネルの廃棄量は36年に最大で約28万トンに達するという。25年から10年ほどで数十倍に拡大する見通し。ただ足元で、太陽光パネルをリユースする仕組みやリサイクルする技術は十分に確立していないため「処理コストの安い粉砕、埋め立て処理が主流になっている」(SMFLの力石健太郎副部長)状況だ。

既にオリックスは太陽光パネルの活用に向けてリユース事業を開始。オリックス子会社のオリックス環境(東京都港区)が4月に使用済み太陽光パネルの国内販売に乗り出した。発電事業者などから回収した使用済み太陽光パネルを新品の半額程度で販売する。初年度に5000枚程度を販売する計画だ。

回収した太陽光パネルにライトを当てて発電能力や外観を検査している(オリックス提供)

まずオリックスなどが太陽光発電所の運用・保守を請け負うオリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント(OREM、東京都江東区)に使用済み太陽光パネルを約170枚提供する。OREMは運用・保守を請け負う発電所の予備品として導入することで、太陽光パネルが破損した際などに素早く入れ替えができる体制をつくる。

オリックス環境営業第二部の桑原武部長は「これまでメーカー保証の対象とならないリユースパネルを使う判断ができない発電事業者が多かったが、(導入したい太陽光パネルが)生産終了などで導入できないケースもあり、リユース需要が出てきている」と話す。また「自家消費型太陽光発電所を新たに設置する企業がリユース品を導入することで、さらに環境配慮をアピールする動きもある」という。今後は効率的に取引できるようにウェブ上で需要と供給をマッチングする仕組みを作る方針だ。

東京センチュリーは北九州市などとリユース太陽光パネルを使った実証実験に取り組んでいる

リユース太陽光パネルの普及に向け、自治体と連携して実証実験に取り組む動きもある。

東京センチュリーは23年にリユース太陽光パネルで発電した電力を北九州市に売電する実証実験を開始。設備の保有を東京センチュリー、リユース太陽光パネルの提供を新菱(北九州市八幡西区)、PPA(電力販売契約)を北九州パワー(北九州市小倉北区)が担う。リユース太陽光パネルの損耗・劣化率や導入に伴う経済合理性などを7年ほどかけて検証する。

基準・規制の策定課題 コスト問題も避けられず

今後、太陽光パネルのリユース、リサイクルを進める上で課題の一つになるのが、基準や規制の策定だ。40を超える発電事業者や太陽光パネルのメーカー、リサイクル事業者などで構成する太陽光パネルリユース・リサイクル協会(東京都中央区)の細田雅士事務局長は「まだ太陽光パネルのリユース、リサイクルが立ち上がる過渡期であるため、業界内で(取引や性能、廃棄に関する)十分な基準がない」と指摘する。加えて、リサイクルを推進するためには「廃棄物処理法以外に(家電リサイクル法や自動車リサイクル法のように特化した)個別法があることが望ましい」とみる。まずは「民間が協力して知恵を出し合うことで基準を決め、その後規制する法律を作るべきだ」(太陽光パネルリユース・リサイクル協会の細田事務局長)と主張する。

リサイクルコストの問題も残る。SMFLの力石副部長は太陽光パネルのリサイクルにおいて「ガラスなど経済的なメリットを出しにくい材料もある」と話す。東京センチュリーの担当者も「太陽光パネルの原料の多くがガラスであるため、リユースの方がより事業化に向いている」とみる。

太陽光パネルリユース・リサイクル協会の細田事務局長は「ガラスの資源性をいかに高めるかが重要。現状ではガラスをダウングレードするリサイクル法が中心になるので、パネルからパネルを生み出す『水平リサイクル』を将来普及できるかがカギを握る」と指摘する。当面、リース各社は太陽光パネルのリサイクル技術の開発動向も見極めながら、リユース、リサイクルの仕組みづくりを進めることになりそうだ。