大事件ばかりがニュースではない。身近で巻起こった仰天ニュースを厳選、今回は「ゴールデンウイーク」にまつわる記事に注目し反響の大きかったトップ10を発表する。観光地にお出かけ、鉄道を利用した人も多いこの時期に読んで欲しい第4位の記事はこちら!(集計期間は2018年1月〜2023年12月まで。初公開2019年10月14日 記事は取材時の状況、ご注意ください) *  *  *

 列車が駅に到着、または通過する直前、ホームで流れる「黄色い線の内側に下がってお待ちください」というおなじみのアナウンス。線路への転落や列車との接触事故を避けるための注意喚起で、誰もが一度は聞いたことがあるはずだ。

 だが、この黄色い線の内側が人ひとり分のスペースしかなく、ギャグかと思ってしまうほどホームの狭い駅が大阪にある。それが「中津駅」(大阪市北区)だ。

◆ホームが狭すぎて並ぶと危険?

 梅田駅の隣駅ということもあって関西では知っている人も多く、ネット上では“日本一危険な駅”にも名前が挙がっている。今回、初めて中津駅を訪れたが、都内でホーム幅の狭い駅として有名なJR御茶ノ水駅の比じゃないレベル。

 なんと黄色い線(点字ブロック)とその間の待機スペースの幅がほぼ同じ。これでは乗車口に列を作って並ぶことも不可能だ。

 そもそもの話、普通の駅にはあるはずの乗車口の位置を案内するホームのペイントもなければ、上から吊り下げられたプレートも見かけない。これは「並ぶな危険!」というのを暗に示唆しているのだろうか?

 中津駅は両側を線路に挟まれた島式ホーム2つを持ち、平日は約520本の列車が発着。1日あたりの乗降客数は2万1949人(2017年)で、さらに神戸三宮駅方面に向かう神戸線、宝塚駅方面と結ぶ宝塚線の乗り換え駅になっており、実際には統計以上の利用客がいる。

 特に朝の通勤ラッシュ時は、ホーム端にある唯一の階段に向かって人が殺到。階段寄りの部分は、ホームを埋め尽くすほどの人で覆われる。実際に転落事故や列車との接触事故も多く、最近だと2019年4月に人身事故が起きている。

 筆者が訪れたのは昼過ぎだったため人もまばらだったが、1つしかない階段は非常に狭く、車いす用の階段昇降機の設備は見当たらない。

◆飲んだ日は怖くて利用できない

 正直なところ、車いすの方がこの駅を利用するのは危険極まりないだろうし、ベビーカーの利用もおすすめできない。いずれも脱輪、転落のリスクが高いからだ。

 また、駅ホームでは酒に酔った人が線路に転落する事故も頻発しているが、これほど狭いとちょっとよろめいただけでも落ちてしまいそうだ。駅周辺には改札近くに大衆酒場がある程度で飲食店は少ないが、マンションなどが林立している地域のため、ほかの場所で飲んで帰宅のために下車する人も多いはずだ。

 中津駅の近くに住んでいる筆者の知人も「酔った状態では危なすぎて使われへん。飲んだ日は(近くにある)地下鉄の中津駅から帰るようにしてる」と話していた。

 ホームには《黄色い点字ブロックの内側におさがりください》と書かれた注意書きの看板があるが、ホーム中央には柱が通行を妨げるような形であるため、点字ブロックの内側を歩き続けることはそもそも不可能。

 これほどの狭小ホームの影響かゴミ箱もほかの駅よりも幅の取らないサイズのものだし、ベンチがあるのも2つあるホームの1つだけ。それも一般的な座る仕様ではなく、寄りかかって使う、ほかの駅ではお目にかかれないタイプのものだ。

◆狭すぎてホームドアも設置できない?

 そんな中津駅だが、同駅が持つ“ホームが日本一狭い駅”や“日本一危険な駅”という称号は、以前は別の駅が襲名していた。実は、もっとホーム幅の狭い駅があったのだ。

 それは「春日野道駅」(神戸市)。現在は幅広の新しいホームになっているが、2004年まで使用されていたホームの幅は2.6メートル。中津駅はこれより若干広いようだが、それでも危険なことに変わりはない。

 安全のためにホームドアを設置したほうがいいとの意見は多いようだが、ここまで狭いと別の問題もある。仮に設置してもホームドアで場所を取られてしまうと、朝のラッシュ時は階段付近が今まで以上に混雑してしまうのは必至だ。

 今後、何らかの対策を講じる可能性は高いが、現時点において日本一ホームが狭く、危険な駅であるのは事実。梅田駅の隣で歩いても行ける距離なので興味がある人は、大阪を訪れた際に立ち寄ってみるといいだろう。<取材・文・撮影/高島昌俊>



【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。