日々の子育ての中では、つい乱暴な言葉を使ってしまう人も多いだろう。ただ、親の言葉は絶大な力を持ち、場合によっては子どもを追い詰めることもある。それでは、どんな言葉がアウトなのだろうか。

「ヤバい」「ウザい」といった言葉を言いかえながら語彙を増やす児童書『超こども言いかえ図鑑』著者の一人である小川晶子氏が、10万部突破のベストセラー『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』、新刊『犯罪心理学者は見た危ない子育て』著者である出口保行氏に子どもへの言葉かけと、アウトとセーフの境界線について聞いた。


同じ言葉が呪いにも救いにもなる

小川:『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』には、親がよかれと思ってかけた言葉が、子どもにとっては呪いとなり、追い詰めることになった例が詳しく紹介されていました。

たとえば「みんなと仲良くしなさい」という言葉自体は悪いものではないし、多くの親が言いがちだと思います。でも、それが子どもを追い詰める時というのもありますよね。

出口:同じ言葉が救いになることもあれば、呪いになることもあります。「頑張りなさい」が心から嬉しいときもありますよね。でも、「こんなに頑張っているのに、まだ認めてくれないの?」と感じる場合もあるでしょう。

タイミングって大事なんです。その子がどういう状態であるかによって、受け取り方は全く変わります。今、この言葉がどういう意味に受け取られるのか? 意識したほうがいいですね。

子どもは「こう受け取ったよ」と説明できるわけじゃありませんし、大人ならスルーできても子どもには難しいことがよくあります。子どものほうが窮地に陥りやすいのです。

小川:私は子どもの頃、周囲の大人に成績ばかりを褒められるのがイヤだなぁと思っていて、親にそう言ったら「それはアンタがそれ以外褒めるところがないからよ」と言われて大変傷ついた記憶があります。妹はかわいらしく愛嬌があるのに対し、自分は愛嬌がないことを自覚していたので「私がかわいくないからか」と勝手に解釈してショックでした。

たぶん親はそんな言葉を覚えていないでしょうし、「売り言葉に買い言葉」のようなものでたいして意味はなかったんだと思います。今ではよく理解できるのですが、子どもだったのでそこまでわからなくて。

出口:そういうことはありますよね。その場でぱっと出てしまった一言だから、親は覚えていないけれど、子どもはずっと覚えている。

逆に、何ということのない一言が救いになっている例もたくさんありますよ。万引き常習犯の少年に面接をして、「どうしてこのときは盗って、このときは盗らなかったの?」と聞くと、「だって、先生に『この間のテスト頑張ったな』って言われたから」と言うんです。

万引きとテスト、関係ないんですけどね。学校で先生がかけてくれた一言が嬉しくて、それを思い出すと万引きできないんです。親や先生の言葉は、子どもにとってそれだけ重みのあるものです。