メジャーリーグ・ドジャースに所属する大谷翔平選手の通訳だった水原一平氏は「ギャンブル依存症」であることを明かしたことが報道されています。  愛知県は2020年のデータで、県内でも推定で11万9000人(男性10万1000人、女性1万8000人)がギャンブル依存症と公表しています。借金を重ねて離婚もした依存症の経験者や専門家に防ぐ方法や克服法を聞きました。

■「死ねばいいや」…借金が膨れ上がり家庭も崩壊した転落人生

 三重県の渡辺功一さん(46・2024年3月29日時点)は、友人とはじめたパチンコをきっかけに、競馬など様々なギャンブルにのめり込むようになりました。

ギャンブル依存症問題を考える会 渡辺功一さん: 「お金をかけている興奮状態が、他のものとは比べものにならない」 次第に一人でものめりこむようになり、借金もしはじめました。 渡辺さん: 「一般生活を当たり前のような顔をして過ごしているんですけれども、給料を全部使ってしまった時に、家に入れるお金もない」 渡辺さんには当時、妻と2歳の子供がいましたが、借金を重ねるごとに「お金を借りている」感覚も薄れ、生活費の全てをつぎ込むようになっていたといいます。抱えた借金は400万円に膨れ上がり、妻とも離婚しました。

渡辺さん: 「『外れたら死ねばいいや』みたいな感覚で。いとも簡単に死んでしまうことを選ぶみたいな思考になっていましたね。いま考えると恐ろしいなと。最後の最後まで、自分がギャンブル依存症だということに、まさか自分がと」 元妻に勧められて、渡辺さんはギャンブル依存症の支援団体に助けを求め、何度も通うことで依存症を克服し、今では同じ病で苦しむ人やその家族の相談役として、講演などを行っています。

■支援団体が指摘…増加する「オンラインカジノ依存者」

 渡辺さんを支援した「全国ギャンブル依存症家族の会」には、今もたくさんの相談が寄せられているといいますが、この数年、特に増えているのが「オンラインカジノ」の依存者です。

「全国ギャンブル依存症家族の会」愛知代表の松本知美さん: 「ポイントプレゼントみたいな感じで無料の登録をすると、ゲーム感覚でカジノのゲームができたりする。ゲームの延長の感じで課金していく仕組みに似ていますが、その先にいくと実は違法のカジノですと。のめりこむような作りになっているので(依存症は)誰でもなります」

違法のオンラインカジノはスマホなどでできてしまうため、24時間どこでもできてしまい、より依存症になるリスクが高いといいます。

■ギャンブル依存症の診断基準となる「2大症状」

 ギャンブル依存症になる経緯を、愛知県の「こころの健康推進室」に聞いたところ、1度ギャンブルをやるとさらに刺激を求めて金額が増える、ということを繰り返すうちに「脳の回路」そのものが変化するといいます。

「お腹が空いてご飯が食べたい」と同じような感覚で「ギャンブルみるとやりたくなる」「負けた分はギャンブルで取り返す」といった条件反射が起こるようになり、まさに「やめたくても、やめられない」状態に。 脳の回路が歪んでしまっているため、「本人がだらしない」「意志が弱い」といった性格面が原因ではない「病気」の状態ということです。 ギャンブル依存症の診断基準となる2大症状が「借金がある」「ギャンブルをするために嘘をつく」ことです。

ギャンブル中心の思考しかできなくなっているため、多くの依存症患者はこの2つに当てはまるといいます。

■経験者に聞いたギャンブル依存症の「克服法」

 ギャンブル依存症の治療はどう行っていくのか、ギャンブル依存症問題を考える会の渡辺さんは、支援団体に通ってギャンブル依存症患者同士でグループミーティングをするなどして克服したといいます。 例えば「使ってはいけないお金に手を出してどんな気持ちだったか」など、正直な気持ちや心の変化を吐き出し、仲間の意見を聞くことを繰り返したということです。 依存症の人は、人間関係が破綻することがほとんどで、そういった中で「必ず回復できる」と言われたことが希望になり、克服できたと話します。

依存症の自覚がある方や、その家族で悩んでいる方は、各県に相談窓口があります。

【東海3県の相談窓口】 愛知県 精神保健福祉センター 052-951-1722 岐阜県 精神保健福祉センター 058-231-9724 三重県 こころの健康センター 059-223-5243 2024年3月29日放送