超高層ビルが建ち並ぶドバイには、世界中から多くの観光客が集まる。人口も10年間で倍増し、その多くはビジネスチャンスや超高級住宅を求める移住者だ。所得税や投資収益に税金がかからず、最近まで法人税すらなかった税制度が、富裕層や投資家などの呼び込みにつながった。

【映像】24時間で2年間分の雨が降ったドバイ

 ドバイは現在、人口の9割が移民。犯罪率は日本より低いが、脅迫罪で実刑判決を受けたガーシー元参議院議員の潜伏先だったことや、国際指名手配となった「トケマッチ」元代表の逃亡先と言われていることから、犯罪者に好まれる都市のイメージもある。『ABEMA Prime』では、世界から人が集まるドバイについて、専門家とひもといた。

■ドバイ経済の成り立ち

 ドバイは、UAE(アラブ首長国連邦)を形成する7つの首長国の一つ。面積は約3885平方キロメートルで、埼玉県と同じくらいの国土に約368.7万人が暮らす。アラビア語と英語が公用語になっている。

 ビザにはいくつか種類があり、期限や条件はそれぞれ異なる。ドバイ法人の所有者か株主になると発行される「投資家ビザ」、ドバイ法人に就職すると取得できる「就労ビザ」、規定月収を超えると申し込める「リモートワークビザ」のほか、不動産ビザ、退職ビザ、ゴールデンビザ、家族ビザなどが用意されている。

 豊かなイメージがあるドバイだが、どのように政府は収支をまかなっているのか。2019年の発表では、ドバイ政府が設定した手数料などの収入が64%、税収(物品税や付加価値税など)が24%、オイルマネーが8%、政府投資による配当金収入が3%、そのほかアパートや店舗賃料、ホテルなどの手数料が収入となっている。

 税金事情は、「世界トップクラスの安さ」とも評される。所得税や相続税、贈与税、固定資産税はなく、投資によるキャピタルゲインもない。法人税は9%だが、免税となる地域・事業規模がある。

 日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)は、5%に設定されている。国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、「VATのパーセンテージを変えて、税金を取っていく。対外的には『税金が低い』と言えるが、集められているところから集めている」とカラクリを説明する。「会場やホテルをパッケージにして、数千人規模のイベントをやってもらう“コンベンションビジネス”での手数料など、石油に依存しない収益を増やしている」。

■ドバイの住み心地・メリット

 1999年生まれの鈴木結さん(24)は、ドバイに魅了されて、現地で働く道を選んだ。4年制大学で経済学を学び、学生時代は毎年アルバイトやインターンに奮闘。2022年に国内の一般企業に就職するも、2023年12月に会社を退職して、ドバイへ移った。現在は、日本人の移住をサポートする「ドバイ総合研究所」に勤務している。

 鈴木氏は「資産を築く上で海外へ出る必要がある」といった危機感から海外を志向し、友人がいたドバイに「ビジネスの観点で魅力的な国だ」と着目した。「アブダビとの国境沿いで、3人で月36万円の家をシェアハウスしている。ブルジュ・ハリファ周辺のマンションだと、1LDKで月100万円ぐらい。物価は日本の1.5〜2倍ほど」。

 食事は「世界各地の人々が食べられるよう、各国の料理が楽しめる」。旅行先としても十分で、「航空機は若干高いが、ホテルは東京と比較すると安い」。住環境は「基本的にインフラが築10年未満で、最新技術も取り入れられているため、生活しやすい」と語る。

 治安はどうか。「Numbeo」の国別犯罪指数2024によると、UAE(15.6)はアンドラ(12.9)に次いで、世界2位の犯罪率の少なさだ。以下、カタール(16.0)、台湾(16.7)、オマーン(19.0)などと続き、日本(22.6)は9位に位置する。

 鈴木氏も「世界トップクラスにいいと思う」と太鼓判を押す。「東京よりもいい。子どもや夜道の女性のひとり歩きも安心。日本より痴漢や軽犯罪も少なく、逆に危機感が薄れてしまうほどだ」。

■ドバイの“ココがイケてない”

 外務省の海外在留邦人数調査統計によると、ドバイ在住の日本人は、2023年で3557人と、UAE全体(4546人)の約7割を占める。また2018年の3147人(UAE全体では4280人)からの5年間でも増加傾向にある。

 現地での仕事探しはどうか。「仕事はたくさんあるが、労働者階級と同様の仕事をすると、時給単価は安くなる。駐在員や事業主、投資家にはいい環境だが、労働は魅力的と言いづらい。日本人では、ネットビジネスなど場所に関係なく仕事できる人が多い印象だ」。

 ドバイでは先日、24時間で2年分の大雨が降り、街全体が洪水被害に見舞われた。「道路に排水機能がないなど、インフラ強度の弱さを感じる部分もあるが、それ以外の不満は感じない」とした。

■なぜ逃亡者はドバイへ?

 そんなドバイを、犯罪者が逃亡先に選ぶ理由は何か。山田氏は、まず「ビザの取りやすさ」を挙げる。続いて経済特区がゆるく、「会社を作れば、家族や従業員のビザも出て、そこへ潜り込める」ことがある。また、金融面でも「海外で持っている仮想通貨をドバイで引き落とせば、税金がかからない。まったく足がつかずに送金できる“イスラム金融”の仕組みもあり、犯罪で稼いだお金を使いやすく、調査されにくい」といった利点がある。

 ドバイ警察によると、2022年までの過去2年間で、国際指名手配犯は432人が逮捕された。罪状は計画的殺人、資金洗浄、武装強盗など、さまざまな犯罪行為におよんでいる。そのため、対外的なアピールとして、たまに一斉摘発を行うという。「国民に危害を加えそうな、海外で指名手配されている強盗・殺人犯は強制送還する。ただ、石油依存から脱却した経緯もあり、開発した不動産を買ってもらうなど、経済を支えてくれるのであれば、お金の出どころは調査しない」。

 鈴木氏は、現地の雰囲気として「犯罪者も確実に入ってきているだろうが、生活で実感する機会はない」と語る。「彼らもバレないために、ドバイ国内で目立つことはしない。危害を加えられることも、そうした人々と遭遇する機会も少なく、犯罪に関する危機感はあまりない」。(『ABEMA Prime』より)