関東信越国税局は1日、2024年分の茨城県内の路線価(1月1日時点)を公表した。県内約6600地点の平均は前年から0.7%上昇した。上昇は2年連続。つくばエクスプレス(TX)沿線の県南地域と県北地域の差が広がる結果になった。

 県内の最高額は10年連続でつくば市吾妻1丁目の「つくば駅前広場線」で、1平方メートルあたり33万円(前年比6.5%上昇)。上昇幅が最も大きかったのは、7.9%上昇した守谷市中央1丁目の「守谷駅西口ロータリー」で、価格は20万5千円。いずれもTXの主要駅前で、つくば駅前広場線は7年、守谷駅西口ロータリーは8年連続で価格が上昇している。

 路線価は、道路に面した1平方メートルあたりの土地の評価額で、相続税や贈与税の算定基準となる。国土交通省が発表する1月1日時点の公示地価の8割が目安で、売買例や不動産鑑定士の意見を参考にして国税庁が算出する。

 評価を担当した羽場睦夫・不動産鑑定士は、「東京の地価が高騰するなかで、比較的割安なTX沿線の住宅地が選ばれている。守谷駅周辺は供給できる土地が非常に限られていて、希少性が高まっている」と話す。

 一方、日立税務署管内の最高路線価である日立市幸町1丁目の「平和通り」は、前年比1.5%下落の6万7千円だった。(富永鈴香)

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 前年比1.5%下落だった日立市幸町1丁目の「平和通り」は、「横ばい」が3年続き今回は下落に転じた。

 「周辺商店街を広く巻き込み、新たなにぎわい創出を」

 日立駅前の大型商業施設「ヒタチエ」が2023年4月に開店した際の式典で、小川春樹市長が語った期待の言葉だ。オープンから1年あまり。本館は地下1階から地上5階まであり、生活雑貨「無印良品」やフードコートの飲食店など39店舗が入る。

 土地や建物の所有者である市によると、来館者数は年間300万人以上で、同じ場所で22年に閉店した旧イト―ヨーカドー日立店の頃より3割以上増えたという。

 ヒタチエに隣接するパティオモール商店会の佐藤洋一郎会長(64)によると、商店会には、約30年前は50以上の事業所があった。しかし新型コロナで人通りが減ったことで街の空洞化に拍車がかかり、今はその半分という。ヒタチエの影響か、今年に入って新たに1店舗が出店し、もう1店舗もまもなくオープンする見込み。だが、こうした明るい材料は一部にとどまる。

 不動産鑑定士の羽場睦夫さんは「ヒタチエがオープンしたことで人出は若干増えているが、影響は限定的」と分析。市全体で年間3千人近く人口が減少し、老年人口の割合が増えていることが大きいという。「下落傾向を止めるには、新たな産業を誘致するなど根本的な対策が必要になる」と話す。(富永鈴香)