放射線影響研究所(放影研)は13日、親の被爆の子どもへの影響を調べるために計画中の、被爆2世のゲノム(全遺伝情報)解析についての市民公開講座を開いた。広島市中区の平和記念資料館で約200人に解析調査の内容を説明し、理解を求めた。

 放影研は、広島市と長崎市を拠点とする日米共同研究機関。今回の講座のテーマは「親の被爆と子どもの健康」で、放影研分子生物科学部の野田朝男部長が前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)時代からの被爆2世調査の歴史を解説した。出生時の障害の有無や生活習慣病の有病率の調査などを含め、親の被爆が子どもに与える影響を認めた調査結果は現時点ではないといい、調査は続いていることを説明した。

 ゲノム調査も1985年ごろから小規模に始まっているが、影響は認められていないという。野田部長は「2世のゲノム解析で、遺伝影響の有無に最終結論が出るとは思っていないが、これまでよりかなり詳しい話ができるようになると期待している」と話した。

 研究責任者で分子遺伝学研究室の内村有邦室長は、ゲノム解析をする「シーケンサー」の発展で、低コストかつ短時間での調査が可能になったと説明。親が高線量の被曝(ひばく)をした290人と親の被曝線量が少ない290人でDNAの変化の数を比較するという。内村室長は「何かの病気になりやすいなど、将来の健康管理に役立つゲノム情報が見つかった場合には希望者に伝えたい」と述べた。

 パネル討論では、参加した被爆2世から「被爆2世の立場として尊厳を守る意味から(影響を)明確にしてほしい」「差別や偏見につながらないようにしてもらいたい」といった意見が出た。

 本格調査の開始時期は未定。内村室長は取材に「社会的な合意が得られたか、外部の方たちとも相談しながら最終的に判断したい」と話した。同様の公開講座は20日に長崎市でも開かれる。(柳川迅)