京都出身で、江戸時代に活躍した「琳派」を代表する尾形光琳(1658〜1716)の「松島図屛風(びょうぶ)」の高精細複製品が、京都市立芸術大学(京都市下京区)に寄贈された。大学内の一般開放エリアで常設する。

 日本を代表する文化財をデジタル技術で後世に伝えようと、NPO法人京都文化協会(京都市下京区)とキヤノン(東京都)が2007年から進めている「綴プロジェクト」の一環。今回で61作品になる。

 俵屋宗達の「松島図屛風」の右隻をもとに光琳が描いたとされる。波の動きなどが一層ダイナミックに表現されている。縦150・2センチ、横367・8センチで、六枚に折りたたむことのできる六曲一隻。

 米ボストン美術館に所蔵されている原本を高性能ミラーレスカメラ「EOS(イオス)R5」で168分割して撮影し、計約46億画素の高解像度のデータを取得。専用の和紙にインクジェットプリンターで12色を使って印刷した後、京都の職人が金箔(きんぱく)をはり、表装を手がけた。

 キヤノンは、京都で芸術を学ぶ多くの学生に世界に羽ばたいてほしいという願いを込めたという。郡司典子・サステナビリティ推進本部長は「オリジナルに代わって、オリジナルではかなわない自然光の中で見ることもできる」と話した。赤松玉女学長は「思った以上に再現されていて、実物を目にしているよう。学生だけでなく、多くの人に触れていただきたい」と述べた。(北村有樹子)