栃木県日光市は、インターネット上の仮想空間「メタバース」で学校関係者らが市への教育旅行を体験できる「日光市教育旅行メタバース」の運用を始めた。修学旅行前の児童・生徒が事前学習の教材として活用したり、教職員が訪問先を選ぶ検討をしたりする際に使ってもらうことを想定している。

 メタバースのタイトルは「日光の 学び旅かな メタバース」。各ルームに進むエントランスを含め、六つのルームから構成されている。

 「奥日光ルーム」では、約1200年前に日光開山をした勝道上人(しょうどうしょうにん)が発見したと伝えられている「華厳滝」などの観光コンテンツを児童・生徒のアバター(利用者の分身)が歩いて回り、自然を学ぶ。世界遺産の「日光の社寺ルーム」では、電気自動車の「グリーンスローモビリティ」にも乗ることができる。一方、「足尾ルーム」では、足尾銅山の坑道内の見学が可能だ。

 このほか、京都の「湯葉」とは作り方が異なる「湯波」、江戸時代に日光東照宮を造るために集められた大工らが余暇に彫ったと伝わる「日光彫」といった食や伝統工芸、人気のアクティビティー(遊び)について学ぶルームもある。

 メタバースは双方向のコミュニケーションが取れるため、「講義室」も用意してあり、市は「観光協会の講義を聴いたり直接質問したりすることもできる」としている。

 日光市は日本を代表する観光地の一つで、小中学校などの修学旅行生の数は2019年に約18万人いた。ただ、20年はコロナ禍の影響で2万5千人に激減。21、22年は約10万人まで増えたものの、コロナ禍前の水準までは戻っていない。

 市は「メタバースを体験いただき、今後の旅行先の選択肢のひとつに」とアピールしている。(津布楽洋一)