ツーリングカーの源流とも言うべきBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の2024年シーズン第2戦が、5月11〜12日にブランズハッチのインディ・サーキットで開催され、名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)の絶対エース、コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)が覚醒。開幕戦の2022年王者トム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)と同様にポールポジション獲得からの“ダブル”を決め、ディフェンディングチャンピオンのアシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)も週末3戦連続表彰台を継続するなど、ともに前人未到の5冠を目指すチャンピオン経験者が躍動するレースウイークとなった。

 今季2024年よりグリッド間で最大2倍にもなる共通ハイブリッド機構の出力アップや、新たな予選方式“クイック・シックス”の導入など、魅力的な競技規則の追求に余念のないBTCCだが、このブランズハッチよりスーパーソフトに相当するオプションタイヤが今季初投入され、レース1でのリザルトにより続くヒートでの装着コンパウンドに制限が加えられるなど、新たな試みが勝負の行方を左右する。

 そんななか、走り出しのFP1はアーロン-テイラー・スミス(エバンス・ハルショウ・パワー・マックス・レーシング/ヴォクスホール・アストラBTCC)が、続くFP2はトム・チルトン(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が最速を記録し、予選の組み分けで先行する展開に。

 しかし実際のグリッド争いでは「自身の予想を上回ったことに満足している」と語ったBMW使いがQ1、Q2ともに優位に戦いを進め、チームメイトのアダム・モーガンを従えてのWSRによるワン・ツーを確定させた。

「ポールポジションを獲得できて本当にうれしい」と、新型BMW 330e Mスポーツで初の最前列を射止めたターキントン。「BTCCでこの位置を手に入れるのは本当に難しいし、クイック・シックスに進むことだけが最初の期待値だったことを考えると素晴らしい気分だ」

「数年前、ほぼ同じマシンでここでポールポジションを獲得したが、それ以来多くのことが変わった。僕らはセッション全体を非常にうまく管理し、冬の間にクルマを完璧に開発し、最後のアタックでは本当に燃えたね。BMWのワン・ツーで週末を始められて最高だが、重要なのは明日だ」

 そうポールシッターが語ったとおり、明けた日曜のレース1はライト・トゥ・フラッグを決めたエースとは対照的に、フロントロウ2番手発進だったモーガンはドルイドへの進入でローナン・ピアソン(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)と絡んで後退することに。

 さらに序盤は多くのドライバーにドラマが発生し、一時は2番手まで浮上したダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)は左フロントのパンクに見舞われ、一方でソフトタイヤを装着したジョシュ・クック(LKQユーロ・カーパーツ・ウィズ・シネティック/トヨタ・カローラGRスポーツ)は、5番グリッドから見事な走りを披露し、ミディアムコンパウンドを履く2列目3番手発進の現役王者サットンを僅差で抑え、2位でチェッカーを受けた。


■「満足して帰れる」と連続表彰台継続のサットン

 このヒートで後輪駆動のアドヴァンテージを存分に活かしたのが12番手スタートのジェイク・ヒル(レーザー・ツールズ・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)で、ファイナルラップまでにBMWを5番手まで導いてチェッカー。続くレース2では勝者ターキントンとともに終盤のセーフティカー介入にも動じず、サットン、クック、イングラムらと延々の2位争いを展開する。

 これが防波堤となったWSRのエースは悠々のクルージングで連勝を達成し、バトルで消耗したヒルはサットンにドアをこじ開けられてダメージを負いドロップ。残り数周でフォードのインを突いたヒョンデが2位に滑り込んだ。

 そしてリバースグリッドの最終レース3では、スタート直後こそテイラー・スミスのヴォクスホールに遅れを取ったものの、リバースポールの好機を捉えたピアソンのヒョンデがオープニングラップでの逆襲に成功。そこから後続を3秒半以上引き離してのうれしいBTCC初優勝を飾ってみせた。

 後方ではFP1首位のヴォクスホールを仕留めたFP2最速チルトンが2位に滑り込み、ソフトタイヤで9番手発進から猛追したサットンが、開幕から続く表彰台“ハットトリック”を達成する粘り強さを披露した。

「素晴らしい1日だった。競争力の高いBTCCでは連勝もそれほど頻繁にあるわけではないし、クルマは予選から3つのレース、そして週末を通して最高の感触だった。すべてはチームBMWのおかげだ」と完全復活を予感させるパフォーマンスを示したターキントン。

「(11番手スタートから)8位に入ったレース3も良かったし、週末最多得点者としてブランズを離れることになる。ランキング首位に対し2点差というのは良いことのように聞こえるが、すでに(次戦の)スネッタートンに目を向けている。予選とレース1を通してハイブリッドの使用を制限されることがどれほど難しいかが想像できるからね。でも今のところはチームと一緒にお祝いをして、素晴らしい週末をただ楽しむつもりだ」

 そしてポディウム“クリーンスイープ”で、ターキントンに対し2ポイントのリードを確保した選手権首位サットンも「良い週末だった」と一定の成果を強調した。

「第2戦のブランズハッチではハイブリッドのレベルが異なり、タイヤコンパウンドも異なるため、まったく期待していなかった。それでも週末を通してクルマは“オン・ザ・レール”だと感じたし、すべてを最大限に発揮できたと感じている。達成できたことに満足して家に帰れるよ」

 続くBTCCシーズンの第3戦は、ウイナーらのコメントどおり5月25〜26日に高速スネッタートンのフルコース"300"で開催される。