高い出塁率を誇るトップバッター



高い打撃技術を誇る丸。巨人打線に欠かせないベテランだ

 6月12日の楽天戦(楽天モバイル)で今季ワーストの5連敗を喫し、勝率5割に逆戻りした巨人。若手の奮起が期待される中で、ベテランの「89年世代」は復活を印象付ける働きぶりを見せている。

 菅野智之は先発ローテーションで安定感あふれる投球を見せ、9試合登板で5勝1敗、防御率1.53。阿部慎之助監督が就任し、菅野が絶大な信頼を置く同学年の小林誠司とバッテリーを組んでいることも好調の要因だろう。小林は昨年21試合出場に終わったが、今年は26試合に出場している。そして、リードオフマンとして打線を牽引しているのが丸佳浩だ。今季59試合出場で打率.299、4本塁打、22打点。出塁率.391とチームに欠かせない存在だ。

 開幕前は外野の定位置を確約された立場ではなかった。5年契約最終年の昨年は度重なる故障と打撃不振で2012年以来11年ぶりに規定打席に到達できず、121試合出場で打率.244、18本塁打、47打点と不本意な成績に。オフは1億7000万円減の推定年俸2億8000万円で2年契約(年俸変動制)を結んだ。阿部監督は一塁・岡本和真、三塁・坂本勇人、遊撃・門脇誠のレギュラー起用を明言したが、外野は3枠すべてで競争に。丸は左翼で秋広優人、長野久義、萩尾匡也らとポジション争いに勝ち抜かなければいけなかった。

 4月終了時点では打率.250、1本塁打、6打点。開幕は七番でスタートし、三番、五番でスタメン起用されたが、右太もも裏痛で一時離脱するなどなかなか波に乗り切れない。だが、チームが固定できなかった一番で起用されたことで快音が鳴り響くように。5月11日のヤクルト戦(神宮)から26試合連続出塁。5月30日のソフトバンク戦(東京ドーム)では、逆転勝利の口火を切った。5点を追う3回一死一、三塁で東浜巨のカットボールを右前にはじき返す適時打。この一打で球場の雰囲気が変わり、エリエ・ヘルナンデスの来日初アーチとなる3ラン、岡本和真の10号2ランと一挙6点の猛攻で試合をひっくり返した。

 6月11日の楽天戦(楽天モバイル)では1点差に迫られた4回二死一、二塁でコディ・ポンセの153キロ直球を右翼席に運ぶ4号3ラン。12日の同戦でもマルチ安打と好調を維持している。

「技術の引き出しが多い」


 安打を打つだけでなく、選球眼も良いため四球で出塁してチャンスメークする。32四球はリーグ2位。通算1034四球はNPB歴代15位で現役最多だ。6月1日の西武戦(ベルーナ)では6回に中前打で出塁すると、岡本和の左犠飛で本塁に生還して史上47人目の通算1000得点を達成。記念のボードを受け取った。

 他球団の首脳陣は、「技術の引き出しが多い選手。昨年は珍しく苦しんでいたが、体調が万全でなかったことが大きかったと思う。コンディションさえ整えれば今の活躍に驚きはありません。出塁するだけでなく、甘く入ったら一発もあるので投手は初回の先頭打者から息が抜けない。ヘルナンデスとの一、二番コンビは12球団最強なのでは。打ち出すと止まらなくなるので、チャンスメークさせないようにしないと」と警戒を強める。

「1人5連覇」を達成した優勝請負人


 丸にとって阿部監督は憧れの存在だ。千葉県勝浦市で過ごした小学生のときにソフトボールチームに所属。「当時は左打ちの捕手で、主将だったので(背番号)10番だった。ぴったりはまるなということで、阿部さんのリストバンドを着けて試合をしていた」と振り返る。同じ千葉県出身で左の強打者。18年オフに広島からFA移籍した際は、チームメートだった阿部監督の打撃練習を食い入るように見つめる姿があった。指揮官の期待は大きい。「体は丈夫だし、練習はいっぱいする。もうあと(ひと花ではなく)ふた花ぐらい咲かせてほしい」とハッパをかけていた。

 チームメートだけでなく、他球団の同学年の選手たちも奮闘している。菊池涼介、田中広輔(ともに広島)、中田翔(中日)はかつてチームメートだっただけに良い刺激になっているだろう。丸は「当然レギュラーでまた出たい。またやってやるぞと挑戦するような気持ち。子どものころにあこがれていた人を胴上げしたい」と闘志を燃やしている。広島で16年から球団史上初となるリーグ3連覇の立役者となり、巨人に移籍後も中心選手として19年からの連覇に大きく貢献。「1人5連覇」を達成した優勝請負人は、阿部監督やナインと歓喜の瞬間を味わうためにダイヤモンドを疾走する。

写真=BBM