ネブラスカ大学からNBA入りを目指す日本代表の富永啓生が5月3日(現地時間2日)、オンラインでメディア対応し、「ここから100パーセントの力を出して、どこまで通用するか、どのレベルのところまでやっていけるか、1日1日レベルアップしていきたい」と力強く語った。

 現在はネブラスカ大でチームの練習に参加したり、ウェイトトレーニングをしたりして準備している。大学とNBAの違いについて問われると、「バスケットのペース」としながらも、「NBAはファーストペースでやっていると思うが、僕はファーストペースのほうが好きなので、そこは簡単にアジャストできると思う。3ポイントラインの距離ももちろん違うが、自分は遠いところから打つのが好き」と、それらの部分では心配していない。ただ「ハンドリングや体作りが一番の課題になってくる」と取り組む点を挙げた。

 今夏は「パリ2024オリンピック」も控えており、「NBA選手になるのが目標なのでそこは本当に目指しつつ、オリンピックもあるということで、スケジュールなどを考えながらうまく両方を目指していきたい」と、日本代表としての出場も視野に入れている富永は、同じグループBでフランス代表のビクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)と対戦することについて「もちろん一回り、二回り大きいと思うが、(ネブラスカ大が所属していた強豪カンファレンスの)ビッグテンでやってきて、大きい選手や手足が長い選手に対しての耐性というのは結構ついてきている。そういう面では準備できている」と自信をのぞかせた。

 勝ち進めば可能性のあるアメリカ代表との対戦で、自らの憧れであるステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)との顔合わせについて聞かれると、「(実現すれば)本当に素晴らしく光栄なこと」としながらも、「やるからにはいちファンではなくて、正々堂々勝ちにいく気持ちで。もちろん当たるかどうかわからないが、どこのチームかは関係なしに、やるからには本当に勝ちにいくことがまず大事」と負けん気の強さを見せた。

 まだ正式発表はされていないが、「FIBA バスケットボールワールドカップ 2023」を欠場したロサンゼルス・レイカーズの八村塁も、パリオリンピックでは日本代表に加わる可能性がある。名門レイカーズでNBAのスーパースター、レブロン・ジェームズやアンソニー・デイビスとともにスターターとして活躍し、強豪がそろうウェスタン・カンファレンスでしのぎを削ってきた八村が出場を決めた場合については、「八村選手が加わることで、日本は一段階も二段階とレベルアップできる。本当に楽しみ」と胸をふくらませた。

 4月には婚約も発表。「毎回試合に応援にも来てもらっていたし、いろんなところで、すごく支えてもらった。それこそ、なかなかうまくいかないことがあった時も、すごく支えになってくれて、とてもありがたい存在」と婚約者を語り、家庭を持つことが、今後プロとしてやっていく動機になるかどうかについては、「あまりそこは考えすぎず、普通に今までやってきたとおりにやって。まずは、自分のやれる100パーセントの力を出して、結果はそこからついてくる」と、挑戦者として全力を尽くすことを強調した。

 自らを「質問するタイプではない」という富永だが、NBAを目指す上で、日本代表の先輩であり、NBAで6年プレーしてきた渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)に、時にメッセージを送って質問したりするという。その渡邊も4月、自らに選択権があった来シーズンのプレーヤーオプションを破棄し、Bリーグでプレーすることを発表。渡邊本人が前もって告知し、その発表を行ったInstagramでのライブ配信を自らも視聴した富永は、「自分が目指している舞台でああやって6年間プレーされている方の本心を聞いて、もっと自分も頑張らなきゃいけないと思ったし、自分もそのコートに立って頑張っていきたいと改めて思った」と意欲を高めていた。

 富永は、ネブラスカ大4年生の今シーズン、出場した32試合すべてで先発し、1試合平均15.1得点。1シーズンの3ポイント成功数76本は、ネブラスカ大史で8位の記録で、同大を2013−14シーズン以来のNCAAトーナメント出場に導いた。チームは1回戦で敗れたが、ファイナル4を前にしたイベントでは、3ポイントコンテストとオールスターゲームの参加選手に選ばれ、3ポイントコンテストで優勝した。

 富永は今後の予定を「まだこれといったことはわかってないが、今はNBAにいくことを目指して、何が一番いい選択なのかというところを(考えながら)やっていく」と話し、パリオリンピックについて「まず1勝でも多く挙げること。決勝トーナメントにいくのが、チームとしての目標だと思う。自分としてはワールドカップで出た課題を克服できるようにしたいのが一番。あとは自分の役割を果たして、チームの勝利に貢献できるように頑張りたい」と決意を新たにした。

取材・文=山脇明子