結婚して30年以上になるという女性。夫からのモラハラに悩まされてきたといいます。

弁護士ドットコムに相談を寄せた女性によると、夫は「お前より親が大事」といって、常に義母を優先するそうです。

女性は隣家に住む義母の世話を押し付けられ、毎日晩御飯をつくって運んでいるそうです。また、義母の姉の面倒までみているといいます。

しかし夫は「働いているから」という理由で家事や義母、義母の姉の世話は一切みずに、休みの日はゴルフや釣りなどで家を空けることも多いそうです。

女性はパートとして働いており、家事と義母、義母の姉の面倒に追われながら、自分の実家の用事もこなしている日々です。

夫は「お前は実家で暮らせ。うちの親を蔑ろにするやつはこの家にいらない!」と言ってくることもあるといい、女性はすっかり疲れてしまったとのことです。女性は、どうしたら離婚できるのでしょうか。近藤美香弁護士に聞きました。

●離婚が認められる「証明」とは?

——この女性のケースの場合、夫のモラハラや義母の世話の強要などの理由で、離婚は可能でしょうか。

夫の言動が、婚姻関係を破壊する程度にひどい場合や、モラルハラスメントに該当するような場合は、民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして、裁判で離婚が認められる可能性があります。

その場合でも、妻側が、裁判においてモラルハラスメントがあったことを証明することが必要になりますので、夫の具体的な言動の録音や記録などが必要です。

なお、このケースの場合は、まず、夫の言動が強要とまで言えるのかどうかという問題もあります。

具体的な状況次第ではありますが、女性が、義母や義姉のお世話について夫に話し合いを求めても、夫が話し合いに一切応じず、「そんなこと言うなら出て行け」等と述べて、全てを妻に押し付けるような場合は、夫の言動が婚姻関係を破たんさせるものであると認定される可能性があるでしょう。

一方で、女性が、夫や義母たちに嫌われたくないという理由等で、夫の要求に反論できず応じてきたような場合は、それを理由として、裁判所に離婚を認めてもらうのは難しいと考えられます。

●モラハラによる慰謝料請求はできる?

——長年のモラハラに対する慰謝料請求など、より有利に離婚する場合、女性はどうしたらよいでしょうか。

離婚訴訟において、モラルハラスメントを理由として慰謝料が認められるためのハードルはかなり高いのが現実です。

したがって、特に婚姻期間が長い場合は、モラルハラスメントの慰謝料を求めるよりも、財産分与や離婚成立までの婚姻費用(生活費)をきちんと確保することに注力するほうが、経済的なメリットが大きい場合がほとんどです。

財産分与や婚姻費用をきちんと確保した上で、さらに慰謝料を請求したい場合は、証拠が全てですので、相手の言動を録音したり、LINEやメール等を保存する、詳細な記録を書きためることなどが大切です。

【取材協力弁護士】
近藤 美香(こんどう・みか)弁護士
弁護士登録直後から大手弁護士法人にて500件以上の離婚・不倫慰謝料問題の解決に関与。夫婦カウンセラー資格保有。これまでのキャリアを生かし、独立後も引き続きこれらの問題に注力しています。
事務所名:エトワール法律事務所
事務所URL:https://etoile-lawoffice.jp/