気軽にバイクを楽しめる事が魅力でもある原付一種ですが、法定速度が30km/hだったり二段階右折が必要など、その他排気量のバイクに比べて不便な点も多々あります。こうした原付一種の厄介なルールを無くすために、原付二種として登録する方法があるようです。一体、どのような方法なのでしょうか。

原付一種の登録を二種に変更!?「書類チューン」

 バイクの中で最小排気量カテゴリである50cc以下の原付一種は、車体価格が安く学科試験だけで取得できるため、気軽にバイクライフが楽しめる事で人気を博すカテゴリ。ただし法定速度が30km/hに制限されているほか、必要に応じて二段階右折しなければならず、何かと不便な部分が多いのも事実です。

 そうした原付一種の厄介なルールをなくし、もう1段階上の免許区分である原付二種に登録する「書類チューン」という方法があります。排気量はそのままで登録申請ができるようですが、書類チューンとはいったいどのようなものなのでしょうか。

原付一種の厄介なルールをなくし、もう1段階上の免許区分である原付二種に登録するのが「書類チューン」
原付一種の厄介なルールをなくし、もう1段階上の免許区分である原付二種に登録するのが「書類チューン」

 実際に50cc以下の原付バイクを改造して排気量をアップした場合、その旨を役所に届け出る必要があります。たとえば50cc以下から52ccに排気量をアップした場合、原付二種として申請をして、白ナンバーから黄色ナンバーに登録変更をするなど。

 書類チューンは、そのような車体への改造を一切おこなわず、書類上だけ排気量をアップさせたと偽って、実際とは違う車両区分に登録する行為。

 そんな書類チューンは50cc以下の原付バイクでおこなわれることが多いようで、外観だけでは排気量を改造したかはわかりません。そのため、役所で虚偽の申請書を提出するだけで、原付二種の黄色ナンバーが貰えてしまうというカラクリです。

 この行為は、50cc以下のままのバイクを排気量アップしたと偽って届け出をしているので、当然ながら「違法」。なぜ50cc以下の原付一種でこのような違法行為がおこなわれているかというと、書類を提出するだけで原付二種のメリットを得られるためです。

 黄色ナンバーに変われば、白バイの取り締まりの標的になりやすい原付一種の30km/h制限や二段階右折を守る必要がなくなります。しかも、90cc以下であれば自動車税は原付一種と変わりません。わざわざ改造したり、新たにバイクを買い換えることなく、書類ひとつで原付二種と同じように走れてしまうのです。

書類チューンによって不正に登録をする「書類チューン」は違法行為
書類チューンによって不正に登録をする「書類チューン」は違法行為

 書類チューンによって不正に登録をすると、地方税法第463条の20(種別割に係る虚偽の申告等に関する罪)に基づいて以下の内容で罰せられます。

「前条の規定により申告し、又は報告すべき事項について虚偽の申告又は報告をした者は、30万円以下の罰金に処する」

 違法登録をして摘発された場合は30万円以下とかなり高額な罰金となっており、決して軽いものではありません。「どうせバレないだろう」とタカをくくって、安易に虚偽の申請をすると痛い目を見ることになるので注意してください。

 またそのほかのリスクとしては、不正に登録した車両で事故を起こした場合、保険金が支払われない可能性がある事。

 書類チューンによって原付一種から原付二種へ登録した場合は、保険会社の内容も同様に契約することになります。そのため、虚偽申請がバレてしまうと保険の契約が無効になってしまい、賠償金を自腹で支払う必要が出てくるという事です。

 重大な事故を起こして加害者になった場合、罰金30万円では済まされない取り返しのつかない事態になりかねません。メリットよりも発覚した際のリスクのほうがはるかに大きいので、軽い気持ちで書類チューンに手を出すのは絶対にやめましょう。

 また、書類チューンをした車両を運転し、スピード違反で捕まった場合も要注意。一般道では30km/h以上の速度超過は1回で違反点数が6点以上となるため、いわゆる「一発免停」となります。

 たとえば、不正登録の車両で40km/h制限の道路を60km/hで走行して検挙されたケース。書類上ではなく実際の排気量をもとに違反が適用されるため、書類チューンであることがバレてしまうと30km/hの速度超過としてみなされ、一発免停になってしまう可能性が高まります。

排気量を上げるには、エンジンのシリンダーの内径を拡大する「ボアアップ」という改造が主流
排気量を上げるには、エンジンのシリンダーの内径を拡大する「ボアアップ」という改造が主流

 ちなみに排気量を上げるには、エンジンのシリンダーの内径を拡大する「ボアアップ」という改造が主流。

 改造と聞くと違法マフラーで爆音を響かせるといったマイナスなイメージがあるかもしれませんが、排気量アップ自体は正しく役所に届け出をすれば、法的にも認められた行為です。

 ただし問題になるのが書類チューンとは反対に、排気量の変更申請をせずにボアアップをしたり、エンジンを載せ替えたりする行為。

 もちろんこれは完全な違法行為にあたるだけでなく、もし原付か普通自動車の免許しかない人がボアアップをした車両を運転すると、無免許運転になってしまい、「違反点数25点」と「免許取り消し」の行政処分に加え、「3年以下の懲役、または50万円以下の罰金」という非常に重い刑事処分が下されます。

 安易に改造して違法行為に手を染めないよう、くれぐれも注意してください。