◇23日 大相撲夏場所12日目(東京・両国国技館)

 新小結・大の里(23)=二所ノ関=が宝富士を押し出し、3敗を守った。2敗で単独トップだった平幕・湘南乃海(26)=高田川=が関脇・阿炎に押し出され、トップは大の里、湘南乃海、大関・琴桜、新入幕・欧勝馬の4人。12日目を終えて3敗が首位は2003年名古屋場所以来で、優勝争いは大混戦の様相を呈してきた。

 迷いない電車道で大の里が、賜杯レースへ再加速した。宝富士との3敗対決。もろ手で起こして右を差してから、休まず前に出て押し出した。直後に湘南乃海が敗れ、再びトップに立った。

 取組内容には「良かったです」と3度。再び先頭集団を形成したことも「気にしないです」。言葉は少なかった。新入幕から2場所連続で11勝を挙げ、優勝争いを経験。そして、あと一歩及ばなかった。最終盤の土俵の重みは身をもって分かっている。

 今場所からやっと、ざんばら髪からまげ姿になった幕内3場所目の23歳。白星を積み重ねることで、浮かび上がる横綱の名前が何よりの大器の証明になっている。新入幕からの3場所合計の勝利数は、今場所の9勝目で31勝。30勝の昭和の大横綱・大鵬を上回った。さらに15日制が定着した1949年夏場所以降、新入幕場所で2桁勝利を挙げた中では、歴代最多の白鵬に並んだ。

 今場所前の新小結昇進会見で、師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)からは「本当に次は、13勝2敗くらいで優勝争いできるような力が、上位で今後は大事になってくる」とハイレベルな賜杯争い指令を受けていた。

 11日目の3敗目で目標には届かず、夜は験直し。十両の白熊らと行きつけすし店に足を運んだ。ややお疲れモードの兄弟子を横目に「次、次」とウニやマグロを頰張って吹っ切れた。この日の朝稽古では「そこ(優勝争い)は気にしてない。昨日負けた時点でもうないと思っているんで。あとは4日間集中して」。すっきりした表情で話していた。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「完璧でしょ」と攻めを評した上で「(宝富士は)動くわけじゃないから、思い切っていけますね」。四つ相撲と異なるタイプの相手に力を出し切れるか。残り3日間の注目点を語った。

 13日目は宇良戦が組まれた。何をしてくるか分からない業師と初顔合わせ。「前へ前へという意識ですね」と大の里。三度目の正直へ、無心で突き進む。