サッカー男子のパリ五輪アジア最終予選を兼ねたU―23アジアカップで、日本は2016年大会以来、4大会ぶり2度目の優勝を果たした。日本は7月24日に開幕するパリ五輪の1次リーグでパラグアイ、マリ、イスラエルと同じD組に入ることが決定。注目されるオーバーエージ(OA)枠について、月刊ラモスのラモス瑠偉編集長はアーセナルDF冨安健洋(25)、リバプールMF遠藤航(31)、フェイエノールトFW上田綺世(25)の名前を挙げた。

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 1968年のメキシコ五輪で日本が銅メダルを獲得してから今年で56年。そのメキシコ五輪で得点王に輝いた釜本邦茂さんが引退してから40年が過ぎた。8大会連続の五輪出場を決めた日本。その間、ロンドン、東京大会で2度、4強入りを果たしている。今大会こそ2度目のメダル獲得、そして優勝を目標にしても、誰も文句ないだろう。

 そして優勝を狙うならば、私はOA枠をフル活用し、冨安、遠藤、上田のA代表のセンターライン3選手を入れる。冨安はアーセナル、遠藤はリバプールというプレミアリーグの超名門クラブでレギュラーの座をつかみ、最後までマンチェスター・シティーと優勝を争った。経験値も能力も、世界トップクラスの選手だ。

 上田も昨季はベルギーリーグのセルクル・ブルージュで22得点を挙げ、今季はオランダの名門フェイエノールトに移籍。絶対的エースのヒメネスが在籍しており、出場機会は限られていたが、シーズン終盤にヒメネスが離脱し、スタメン出場するとラスト4試合で3得点2アシスト(シーズン5得点)と結果を残した。

 日本は五輪予選でアジア王者に輝いたとはいえ、五輪本番を見据えれば、さらなる戦力アップが必要になる。決勝のウズベキスタンは今大会、唯一日本に対してガチンコ勝負を挑んできた。A代表のアジアカップでの戦いぶりを参考に、各国は5―4―1のブロックを敷いてロングボール主体の戦いを挑んできたが、ウズベキスタンは前線からプレスをかけ、ボールを奪ったらしっかりとパスをつなぎ、組織的に攻撃してきた。欧州でプレーする選手も多く、本番での戦いを見据えるという意味でもいい戦いだった。

 結果は1―0で振り切り、勝利した。今大会、一番見応えのある試合だった。しかし、内容的にはかなり苦しめられ、このメンバーでは五輪でのメダル獲得は厳しいことは明白だ。

 本番は18人の登録で、OA枠3人を加えれば、五輪予選を戦い、パリ切符を手にした選手の入る余地は大幅に減ってくるが、予選は予選、本番は本番である。各ポジションのセンターラインに冨安、遠藤、上田の3人を置けば、メダル獲得に向け、大きな戦力となる。

 この3人をチームに加える大きなメリットがもう一つある。2026年のW杯北中米大会へ向けてのA代表の底上げだ。

 例えば遠藤が加わることで、今大会のMVPに選出されたベルギー・シントトロイデンMF藤田譲瑠チマがさらなる成長を遂げる可能性がある。藤田はかつて東京ヴェルディに所属していた。当時、私はヴェルディでチームダイレクターを務めていたが、永井監督に起用するよう猛プッシュしていた。視野が広いし、技術も確かなものを持っており、賢い選手だった。

 絶対に伸びると確信していたが、横浜Mに移籍してからはいまひとつ出番に恵まれず、シントトロイデンに移籍してからも苦労している。それでも五輪予選では素晴らしいプレーを見せてくれた。彼のプレーを見ていると、見えている世界が違うなと感じる。俯瞰(ふかん)の視野。ピッチを上から見ているかのように、ボールをさばき、効果的な縦パスを入れてくる。

 この譲瑠と遠藤を組ませてプレーさせれば、譲瑠はさらに高い能力を発揮するだろう。遠藤がアンカー、譲瑠をインサイドハーフとして起用する手もある。ともにトレーニングし、プレーすることで得るものも多いだろう。A代表に譲瑠が加わってくれば田中、守田、旗手らとの競争も激しくなり、選択肢も増える。A代表の強化という面でも、遠藤の存在感は大きい。

 同様に、19歳の川崎DF高井幸大にとって冨安の存在はこれ以上ないお手本となる。高さもあってポジショニングも的確で、今大会の高井はDF陣の中で大きな発見だった。その高井が冨安の守る技術、駆け引きのうまさを吸収すれば、次のA代表のセンターバックとして、期待値が一気に高まる。

 そして柏FW細谷真大にとって上田のシュート技術は最高の教材になるはずだ。細谷の強さと縦への推進力は魅力だが、いかんせん、シュートが下手。シュートの精度が増せば、大化けする可能性は十分ある。

 譲瑠、高井、細谷だけでなく、他の選手にとっても私が推す3人は成長を促す特効薬となるだろう。いかにして五輪世代を進化させ、A代表につながる成長を促すか。なおかつ、五輪でメダルを取るための戦力となる。これが冨安、遠藤、上田をOA枠に推す理由だ。

 各クラブとの交渉もあるし、本人の意向もある。実際に大岩監督が誰を選ぶかは分からない。ただ、大岩監督はA代表の森保監督ともしっかりと連携しているようだし、このパリ五輪で最大限の成果が上がることを期待している。(元日本代表)