「100歳になったら、また来て」

 事件リポーターの東海林のり子さんが26日に90歳になった。現場取材の“レジェンド”は今も、野次馬精神は健在。何でも興味を持って日々楽しく過ごしているという。「卒寿、おめでとうございます」と声をかけると、「100歳になったら、またインタビューに来てね。あと10年だから、大したことない」と元気な答えが返ってきた。(インタビュー第1回・全3回)

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 米寿(88歳)になった時、早く卒寿(90歳)になりたかったんです。だって、卒寿のほうがかっこいいじゃない。

 6年前に夫が亡くなって、現在はマンションで一人暮らしです。息子も娘も近くに住んでいます。もう、一人は全然、楽ですね。だって、自由にできるから。息子やお嫁さんからは「ちゃんと食べている?」と聞かれるけど、適当でいいのよ。

 これまで大きな病気はしたことがありません。特別、気を遣っているわけじゃないけど、コロナにもインフルエンザにもかかったことがないんです。

 健康なのは、健康診断に一度も行かないからだと思っています。健康診断すると数値が出てきて、やっぱり気になるじゃないですか。そういうこと を気にせずに生きてきたことは、いいことだったと思っています。

 仕事は60歳の時にいったん区切りをつけて、そこからは単発でテレビ出演や講演会の仕事をやってきました。

 かつては、事件やワイドショーでリポーターの仕事をしていましたが、完全にやり切ったので、未練はありません。完全燃焼するくらい仕事をすれば、あとは楽ってことなんですよね。

 中途半端に仕事をしている人は、いつまでたっても、納得できないんじゃないかと思います。私は納得できているから、もう適当にふらふらしても大丈夫なんです。

 ここ数年は、韓国ドラマに夢中です。何十年も前に、美容室なんか行くと、女の人がみんな韓国ドラマの話をしたのを聞いていました。当時は、何がそんなに面白いのかしらと思っていたら、自分がハマってしまった。

人生変えた「愛の不時着」

 まず、「愛の不時着」を見始めたんです。人生を変えた出会いと言えるかもしれません。もう3回くらい見ていますから。

 日本のドラマにはないような駆け引きがあって、イケメンが出てくるんです。みんな背が高くて、かっこいい。何時間でも見ることができちゃう。最初の頃は1日に13時間見ていました。合間にご飯食べるんだけど、その間にも「あの2人はどうなったのかしら」って気になるんです。

 好きな俳優は「梨泰院クラス」のパク・ソジュンです。過去の出演ドラマも探して、ほとんど見ました。昨年は大きなカレンダーを買って、部屋に貼っていました。最初は、息子や娘に見られたら、「うちの母親は何をやっているのか」と思われるのが癪だから、隠していたの。でも、娘に見られて「ママ、この俳優さん、好きなの」と言われて、隠さなくなりました。

 パク・ソジュンに関しては、顔写真入りの単語帳も買いました。韓国語を覚えるためです。パラパラめくってみたんだけど、単語は見ずに顔ばっかり見ています(笑)。また、新しいドラマがでてきたら、見なきゃいけないし、過去のドラマもほじくり出してみないといけないし、やることがいっぱいあるんです。

 韓国ドラマ以外では、F1をNetflixが毎年取材して映像化していて、それを見始めました。ロマンチックなドラマではなくて、命懸けのドキュメンタリー。レーサーがどうやってここまできたか、レーサーがこの試合で1位にならないとどうなるのか、を紹介していてくぎ付けになっています。結果が出ないと、簡単にクビになったりして、ヒリヒリするんです。

 車の音や選手のスタートする前の緊張感を見ていると、「こういう人生もあるのか」としみじみと思ったりしますね。ラジオの仕事に行く前や自分を奮い立たせなきゃいけない時に、番組を見て、元気をもらっています。

 こうした新しいことを発見したのは、コロナ禍でした。もし、コロナがなかったら、もう少しベタな生き方だったかもしれません。コロナのおかげで、自分が好きなことを発見できた。毎日、好きなことを発見していて、楽しくて仕方がないんです。

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 コロナ禍で韓国ドラマという楽しみを発見し、いきいきする東海林さん。第2回では食事やフィジカル、さらには死生観について語る。

デイリー新潮編集部