かつては「南極1号」とも呼ばれていたラブドール。何かと淫靡(いんび)なイメージが付いて回るが、意外なところで注目を集めている。場所は四国・徳島県だ。地元メディアの記者が言う。

「4月8日、徳島県は公文書偽造と不適切な会計を理由に観光政策課の元係長(46)を懲戒免職としました。2017年に行われた県のイベントで、地元の藍染衣装を着せる目的で元係長がラブドールを上司に無断で購入したという事案です。昨年9月、地元紙『トリビューンしこく』がスクープしたことで明るみに出ましたが、ドールには“藍ちゃん”という名前が付けられ、同県の阿波おどり空港や知事が出席するパーティーでも展示されました」

 公表された写真を見ると、リアルでどことなく艶っぽい。誰も怪しいと思わなかったのだろうか。

損害額は約41万円

 県の監査委員の調査結果によると、本来は1万2500円のマネキンを使用するべきであり、損害額は約41万円とある。だが、興味深いのはラブドールをどのようにして買ったのかについても書かれていることだ。いわく、元係長は民間業者にラブドールを購入することを依頼(業務委託費として公費を支出)し、17年6月、業者と一緒に大阪市内にあるショールームを訪れたという。

「このショールームは、ラブドールを製造・販売する『オリエント工業』の施設とみられています。同社は東京・上野に本社があり、50年近い歴史を持っている業界の老舗です」(同)

 同社のホームページを探すと、「アンジェ」というラブドールを見つけた。“藍ちゃん”にそっくりである。

「事務所の受付兼秘書として購入した有名人も」

 そこでオリエント工業に聞いてみると、

「私共もニュースで写真を見ましたが、たしかに当社のドールに似ています。しかし、大阪のショールームはすでに閉鎖しており、販売した記録も残っていません」(担当者)

 ラブドールが問題とされたことについては、

「確かに成人用玩具であり、それなりのお値段がします。しかし、独居老人が寂しさを紛らわせるために購入した例や、事務所の“受付兼秘書”として購入された有名人もいる。また、集客用にマネキンとしてバーのカウンターに座らせている飲食業の方もいます」(同)

 県の顔として不適切極まりないとされた“藍ちゃん”は、今年1月まで同県小松島市の倉庫にいたことが確認されている。

「週刊新潮」2024年4月25日号 掲載