薄桜色の参拝服と白い帽子を身に着け、春季皇霊祭の儀に向かう佳子さま=2024年3月20日、読者の阿部満幹さん提供

 伝統を守りながらも、時代に合わせて変化を見せている令和皇室。そのひとつが、女性皇族のファッションだろう。若い世代の皇族である秋篠宮家の次女、佳子さまは公務にあたって、デザイナーが仕立てたドレスやスーツから市販のブランドまで、小物も組み合わせながら、上手な着こなしを見せる。そんな佳子さまの着回しスタイルを振り返ってみたい。

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 どの国でも、ロイヤルのファッションは注目を集める。

 英王室のファッションアイコンであるキャサリン妃は、仕立てのドレスから既製品のファストファッショまで、幅広く着こなす。そして、同じ服でも場面によって小物で変化を加える着回しの上手さでも知られている。

 日本との外交関係樹立125周年の節目にあわせたギリシャへの公式訪問で注目を集める秋篠宮家の佳子さまも、着回し上手なロイヤルメンバーのひとりだ。
 

「公務が増えすぎて、佳子内親王殿下は本当にお忙しい」(秋篠宮家の関係者)

 当然、公務でも「あのとき、お召しだった服」を目にする場面は少なくない。そうしたなかで佳子さまは、小物で変化をつけたり、手ごろな市販ブランドを取り入れたりと上手に着回している。

 たとえば、ギリシャ訪問を前に5月中旬、都内のギリシャ大使公邸での昼食会に招かれた。テレビ局の取材を受けた大使が「ギリシャの国旗の色のワンピースをエレガントにお召し」と感激した通り、佳子さまは青いワンピース姿だった。
 

ロイヤルブルーの装いに薔薇の花飾りのヘッドドレスをあわせたフォーマルな装いで、かごしま国体の総合閉会式に臨む佳子さま。他の公務にも、セットアップのみでよくお召しの装い=2023年10月

 このワンピースは、昨年秋に鹿児島で開催された特別国民体育大会「燃ゆる感動かごしま国体」をはじめ、多くの公務の場でお召しだったもの。臨席した鹿児島国体の式典では、大きな青い薔薇の花飾りのついたヘッドドレスを合わせて、フォーマルな装いに整えていた。
 

佳子さまの美しい立ち振る舞いは、まさにプリンセス=2024年4月23日、東京・元赤坂の赤坂御苑、JMPA

■公務や国際親善で既製品もよくお召し

 最近では、春の園遊会のお召しだった淡いオレンジのワンピースが印象的だ。このときは、共布の薔薇飾りのついた帽子を合わせ、招待者を接遇するにふさわしい装いだった。

 このワンピースも昨年秋に都内の百貨店で開催された日本伝統工芸展の授賞式や、年末に秋篠宮ご一家で撮影した新年用の映像でもお召しだった。

 工芸展ではブローチや帽子もなく、髪もアップでまとめずにおろしており、また違う雰囲気だった。
 

都内の百貨店で開催された日本伝統工芸展の授賞式に出席し、工芸展を鑑賞する佳子さま=2023年9月、東京都中央区

 こうした共布を使った帽子やヘッドドレスが附属するのは仕立ての服だが、佳子さまは市販の服も公務の場に上手く取り入れている。

 たとえば20代から30代女性に人気のコンサバブランド、「Apuweiser-riche(アプワイザー・リッシェ)」や、透け感のある素材やこだわりのある刺繍といったデザインが幅広い世代に人気のブランド「ADELLY(アデリー)」もそのひとつ。

 昨年11月、ペルーを公式訪問中の佳子さまがお召しだったと思われるのが、「アデリー」がオンラインショップでも販売していた税込み6万7100円の「レイヤードスタイルワンピース」だった。

佳子さまがお召しだったと思われる「アデリー」の「レイヤードスタイルワンピース」=同社のウェブサイトから

 同ブランドの広報担当者によれば、テレビでワンピースを着た佳子さまの姿が放映されると、問い合わせが相次ぎ、あっという間に完売したという。

 緻密な刺繍などが使われており、量産はできない。今年4月の再販も数分で完売となり、現在もオンライン上では、「SOLD OUT」のままだ。

「佳子さまがお召しのワンピースを購入できますか」と問い合わせる女性の年齢層は、20代から70代までと幅広かったという。「母とおそろいで着たい」といった問い合わせもあり、幅広い年齢層に及ぶ佳子さまの人気ぶりをうかがわせた。
 

2023年の春の園遊会。この振袖は、オーストリア訪問時にもお召し=2023年5月、東京・元赤坂、JMPA
オーストリア訪問で大統領(右手前)と話す佳子さま。このときの振袖は2023年春の園遊会でもお召しになった=2019年9月、ウィーンの王宮にある大統領府

■佳子さまや愛子さまが選ぶ服

「アデリー」のもう一つの特徴として、日本の職人による国内での製造にこだわっているところだ。振り返れば、天皇皇后両陛下の長女、愛子さまが昨年夏のご静養時にお召しだったアパレルブランド「kay me(ケイミー)」も、日本国内の服飾技術の継承に力をいれている会社だ。

 おふたりとももちろん、海外で生産してコストを抑えたファストファッションも愛用している。しかし、皇室が国内の技術を大切にするように、佳子さまは国際親善の場で日本製の既製服をお召しになったということだ。

 加えて、いまの既製服はかなり機能的に作られている。アデリーの担当者によると、服はワンサイズのみ。佳子さまが着用したと思われるワンピースは、ウエストの締めつけがなく、刺繍の入った上半身はチュール生地で着心地の良さに定評があるという。

「海外訪問では、スケジュールも分単位で組まれ、移動も長時間に及びます。上皇后さまや昔から既製服をよくお召しだった皇后雅子さまもフォーマルかつ機能的で体に負担の少ない装いを模索なさったように、皇族にとって負担のない装いは、大切です」(皇室と交流のある関係者)

 伝統と格式を守りつつも、令和の皇室には新しい風が吹いているようだ。

(AERA dot.編集部・永井貴子)