社長や監査役などの役員には、役員報酬が支給されます。   役員報酬は、労働の対価として支払われる給与ではないため、業績などによっては「報酬をゼロにする」などといったこともあるようです。中には社長が無報酬で働くのはありなのか、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。   そこで今回は、役員報酬の概要や報酬をゼロにしても問題ないのかについて調べてみました。役員報酬は頻繁に変更できるものではないため、金額は慎重に検討する必要があります。

赤字だからと無報酬で働く社長……役員報酬をゼロにするのはあり?

役員報酬は、会社から社長などの役員に支払われる報酬です。
 
雇用契約に基づいて支払われる給与とは異なり、報酬額は定款または株主総会の決議によって定めることになっています。役員報酬は労働の対価ではないため、社長の収入をゼロにすることは可能です。社長の役員報酬をゼロにすることには、以下のようなメリットが考えられます。
 
・会社の収益を増やせる
役員報酬は会社の資金から支払うため、ゼロにすることで収益を増やせます。
 
例えば業績不振で赤字が続くような場合も、設定された金額を支払わなければなりません。社長の役員報酬をゼロにすることで、経営が圧迫されないようにできると考えられます。
 
・株主への誠意を見せられる
赤字決済で事態が深刻なケースでは、役員報酬をゼロにすることで、株主に誠意を見せられます。役員報酬の減額が一般的ですが、ゼロにすることで、経営の立て直しに本気であることをアピールできるでしょう。
 

社長の役員報酬をゼロにする注意点とは?

赤字だからと社長の役員報酬をゼロにする際は、以下のようなリスクが考えられます。
 
・無報酬では社会保険に加入できない
役員報酬をゼロにすると、報酬から健康保険料や厚生年金保険料を徴収できなくなり、社会保険は非加入の扱いとなるため注意が必要です。
 
社会保険の資格を喪失すると、国民健康保険や国民年金の加入手続きを行う必要が生じます。会社が半額負担する社会保険と比較して、個人の負担が大きくなる可能性があるでしょう。
 
・金融機関や取引先からの信用を失うリスクがある
役員報酬をゼロにすることで、金融機関から融資が受けられなくなったり、取引先からの信用を失ったりするリスクがあります。
 

頻繁に変更できない役員報酬……相場や先を見越して決定することが大切!

役員報酬は、基本的に設立年度は設立から3ヶ月以内、2期目からは事業年度開始から3ヶ月以内に決定します。つまり、頻繁には変更できない仕組みになっています。
 
役員報酬を決定する際は、企業規模ごとの相場や先を見越しつつ、慎重に決定する必要があるでしょう。人事院の「民間企業における役員報酬(給与)調査」によると、2022年度の企業規模別・役名別年間報酬の平均は表1の通りです。
 
表1

役名 全規模 3000人以上 1000〜3000人未満 500〜1000人未満
会長 6391万1000円 9305万8000円 5813万1000円 5636万4000円
副会長 5821万5000円 7579万4000円 6205万7000円 3062万6000円
社長 5196万8000円 8602万6000円 5275万6000円 4225万5000円
副社長 4494万4000円 6008万8000円 3947万9000円 3510万6000円
専務 3246万9000円 4545万円 3343万6000円 2543万4000円
常務 2480万円 3354万8000円 2464万2000円 2154万4000円

※人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」を基に筆者作成
 

赤字で社長が無報酬で働くことは可能! ただし注意点もあり

社長の収入は役員報酬で、労働の対価ではないため、ゼロにしたり少なくしたりすることは可能です。赤字決済の際に会社の資金を増やしたり、株主へ誠意を見せたりできるメリットが考えられます。
 
しかし、無報酬になると社長は社会保険の資格を喪失することになり、国民健康保険や国民年金の加入手続きをしなければならなくなります。また役員報酬がないことで、金融機関からの融資が受けられなくなったり、取引先からの信用を得られなかったりするリスクも考えられます。
 
社長の役員報酬は頻繁に変更できるものではないため、社長が「赤字だから今期は無報酬で働く」と言っている場合は、経営を立て直すために慎重な決定が行われたのでしょう。
 

出典

人事院 民間企業における役員報酬(給与)調査 令和5年度 第3表 令和4年 企業規模別、役名別平均年間報酬
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー