大学院卒は、大学卒と比べて高い賃金を得ているというイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。専門的な知識を習得している大学院卒は、大学卒と比べて高い賃金を得ています。   とはいえ、大学院卒業後すぐに高給取りになれるわけではありません。年齢や勤続年数を重ねていくごとに、賃金も高くなっていく傾向です。   本記事では、大学院卒の賃金がどのくらいなのかを解説します。その他にも大学院の学費や生活費についてまとめているので、参考にしてみてください。

大学院卒の初任給

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、新規学卒者で令和5年6月分の賃金等の賃金は大学院卒で27万6000円とのことです。男女別にすると、男性は28万3200円、女性は26万800円となっています。
 
一般労働者の賃金が男女計31万8300円であるため、大学院卒だからといって高級取りにはならないでしょう。しかし、大学卒の23万7000円と比べると大学院卒は4万円ほど高い賃金を得ていることが分かります。
 

年齢別の賃金

大学院卒の年齢別賃金は図表1のとおりで、年齢が上がるにつれて大学卒との差が大きくなってきます。
 
【図表1】

大学院卒 大学卒
20〜24歳 27万4000円 23万9700円
25〜29歳 29万6200円 27万2600円
30〜34歳 36万200円 30万9000円
35〜39歳 43万9300円 35万4100円
40〜44歳 49万8300円 39万4700円
45〜49歳 55万9900円 43万900円
50〜54歳 60万9500円 47万3500円
55〜59歳 64万3100円 49万9100円
60〜64歳 64万3500円 38万3600円
65〜69歳 60万9000円 36万8600円

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より筆者作成
 
大学院卒は大学卒と比べて、業務を行うために必要な専門知識を保有しており、即戦力になる人材と判断されて賃金にも反映されます。
 
また、新入社員のうちは実力ではなく、学歴が高い者に対して多くの賃金を支払う企業が多い傾向です。
 

大学院の学費はどのくらいかかる?

専門学校や大学卒と比べて大学院卒の賃金は高いですが、その分だけ学費もかかっています。生涯年収を考えたら支払う大学院の学費を十分にカバーできますが、一時的に負担になるのは確かです。
 
「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」によると、国立大学院の研究科の入学料は28万2000円、授業料は年額53万5800円です。国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二十二条の規定に基づいて、標準額を定めていることから、国立大学院の多くは入学料と授業料が同額であると認識してよいでしょう。
 
修士課程に進学する場合は2年間で107万1600円、博士課程に進学する場合は5年間で267万9000円の授業料がかかる計算です。
 
私立大学院の場合、文部科学省の「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると、入学料と授業料の年額は図表2のとおりです。
 
【図表2】

授業料 入学料 施設設備費 実験実習料 その他 合計
博士前期課程 79万8465円 20万1752円 7万5589円 2万7108円 3万1676円 113万4590円
博士後期課程 60万4592円 19万2686円 4万9733円 2万5304円 2万1279円 89万3594円
専門職学位課程 106万7207円 19万4492円 5万5762円 2万2561円 7万1825円 141万1846円

文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」より筆者作成
 

学費以外に生活費もかかっている

大学院に通う際には学費以外にも生活費がかかっており、(独)日本学生支援機構の「令和2年度 学生生活調査結果」では図表3のように平均額を伝えています。
 
【図表3】

食費 住居・光熱費 保健衛生費 娯楽・し好費 その他の日常費
修士課程 26万8200円 34万500円 4万7400円 14万7600円 20万円
博士課程 40万9000円 44万7300円 8万1400円 22万8600円 45万1600円
専門職学位課程 29万8600円 27万1700円 5万8100円 18万2800円 40万1600円

(独)日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査結果」より筆者作成
 

大学院卒は大卒と比べて給与は高いが学費や生活費もかかっている

高給取りがどのくらいなのかという具体的な定義はありません。年齢が上がったり、勤続年数を重ねたりしていくうちに、大学院卒は大卒と比べて賃金の差に大きな違いが出てきます。
 
しかし、大学院卒(新規学卒者)の賃金月額27万6000円は、かなりの高給取りとはいえないでしょう。実際に一般労働者の賃金は、男女計31万8300円となっており、その差は約4万円です。
 
大学院へ進学するとなると、その分だけ学費や生活費もかかります。生涯年収でカバーできる可能性が高いにしても、一時的に負担が大きくなることは認識しておいてください。
 

出典

厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況
文部科学省 国公私立大学の授業料等の推移
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
日本学生支援機構 令和2年度 学生生活調査結果
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー