無収入の状態だと、対象となる所得がないため税金は発生しないと考える方は少なくありません。 しかし、現時点で無収入であっても、前年に収入のある方は住民税が発生する可能性があります。   無収入のため住民税が納付できないケースもあるので、必要に応じて制度の利用も検討が必要です。   今回は、無収入でも住民税の請求が来る理由や、納付できないときに利用できる制度などについてご紹介します。

前年に収入があれば住民税の対象となる可能性がある

住民税は地方税のひとつで、当年は無収入であっても前年に何かしらの収入があった方のうち、条件を満たしていれば発生します。
地方税のため、自治体によって税金の対象となる条件が異なる可能性もあります。
 
東京都主税局によると、東京都23区の住民税がかかる条件は以下の通りです。

●生計を同じくする配偶者や扶養している親族がいない方:前年の合計所得金額が45万円を超えている
●生計を同じくする配偶者や扶養している親族がいる方:前年の合計所得金額が35万円×(配偶者と扶養している親族、本人の合計人数)+31万円を超えている
●ひとり親・未成年・寡婦・障害者の方:前年の合計所得金額が135万円を超えている(給与所得者の場合は年収204万4000円以上)

例えば、東京都23区に住んでいて生計を同じくしている配偶者や扶養している親族がいない方の場合、当年が無収入でも前年に50万円の所得があれば住民税は発生します。
 

払わないとどうなる?

住民税を払わないまま放置していると、延滞金が加算される可能性があります。
 
延滞金は期限までに税金が払えなかった場合に加算される金額で、納付期限を過ぎているほど延滞金の金額も高くなります。
納付するときには、本来の住民税に加えて延滞金の納付も必要です。
 
また、住民税の滞納を続けると、督促状が届くケースもあります。
埼玉県のホームぺージによると、督促状も無視していると最終的に預貯金や不動産などが差し押さえられる可能性もあるので、滞納をしたあとも無視を続けるのではなく、なるべく早い納付が必要です。
 

住民税の納付が難しい場合にできること

住民税の対象となっても、廃業を始めとするさまざまな理由で納付が難しい方もいます。
もし住民税が納付できないときは、猶予制度が利用できる可能性もあるので自治体へ確認しておきましょう。
 
地方税法第15条では、地方税の納税をする方が廃業や休業、災害などの理由で納付が難しい場合は、1年以内の期間に限り、徴収の猶予が認められています。
住民税も地方税のひとつなので、自治体に認められれば徴収の猶予が可能です。
 
もし住民税を猶予してもらいたいときは、必要書類をそろえて住民税の納付期限までに申請しておきましょう。
 

無収入で税金が課されなくても所得の申告が必要なケースもある

所得がなければ、所得税も発生しないため基本的に確定申告の必要もありません。
 
ただし、所得のない方で国民健康保険に加入している場合は、所得の申告が必要です。
無収入であることを申告しなければ、国民健康保険料の軽減措置を受けられない可能性があります。
 
なお、国民健康保険料の軽減は世帯収入が低い場合に適用されるので、もし世帯の誰かが申告をしていないと、世帯全員が軽減を受けられない可能性も少なくありません。
世帯全員の所得の申告を忘れないようにしましょう。
 

現在が無収入でも前年に所得があれば住民税の対象となる可能性がある

当年が無収入であっても、前年に収入があれば住民税は発生する可能性があります。
住民税は前年の所得を基に決められているためです。
 
もし前年は所得があったものの諸事情で住民税が納付できない場合は、住民税の徴収猶予が利用できないか確認しておきましょう。
最大で1年間の猶予を受けられます。
 
また、所得がなく所得税が発生しない方でも、国民健康保険に加入している場合は申告が必要です。
所得の低い方に対する国民健康保険料の軽減措置は、申告された所得を基に判断されます。
条件に該当する場合は、世帯全員分の申告を忘れないようにしましょう。
 

出典

東京都主税局 個人住民税 6 個人住民税の非課税
埼玉県 税金を納めないとどうなるの
デジタル庁 e−Govポータル 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号) 第一章 総則 第八節 納税の猶予 第十五条(徴収猶予の要件等)
厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について 国民健康保険料・保険税の軽減について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー