今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は、新NISAでのつみたてに特化して解説した勝盛政治著『新NISAでつみたては会社員の最強アイテム』の一部を特別に公開します(全3回/本記事は第3回)。

※本記事は勝盛政治著『新NISAでつみたては会社員の最強アイテム』(高橋書店)から一部を抜粋・再編集したものです。

【利用時期】だれでも、いつでも、いつまでも続けられる。そして必要な時には換金できる

次に、利用面におけるNISAとiDeCoの違いについて、利用可能年齢や引き出しの可否について見ていきましょう。NISAは18歳以上であれば何歳になっても使えます。20歳でも70歳でも同じ条件で利用可能です。これは非常にシンプルで分かりやすいものです。確定拠出年金もそれほど難解ではありませんが、さすがにこれには勝てません。

利用可能年齢としては、確定拠出年金も掛け金をかける年齢上限が以前は60歳だったものが、2024年以降は一定の条件のもとで引き上げられます。会社員でいえば、60歳以降でも働き続けて、厚生年金保険に加入している期間はかけ続けることができるようになります。また、受け取り開始時期も60歳から70歳の間に開始するものでしたが、その年齢上限が75歳まで引き上げられます。

しかし、こういった制度面の改善はあっても、お金を手元に戻して使うことは原則60歳まではできません。手元にあればお金を使ってしまうという人間の弱さに打ち勝つ強制力がiDeCoのメリットとの意見もあります。それに対してNISAの便利なところは、途中で換金してお金を利用できる点です。

年金に偏ると、こういったことはできません。人生には現役世代でも教育費や住宅購入費などのライフイベントが待ち受けています。また、想定外の出来事による費用がかかることもあるでしょう。そういうことへの対処手段という意味でも、いつでも現金化して使えるNISAを用いておくことです。

【金融機関選び】NISAつみたて投資枠は金融機関の違いによる本質的な影響は小さい

確定拠出年金は、企業型の場合には企業が費用を負担してくれますが、個人型iDeCoの場合には、自分が費用を負担する必要があります。この費用には、制度の運営にかかるコストとして、どの金融機関を利用しても一律にかかる費用と、金融機関ごとに設けている管理等の費用があります。金融機関ごとにかかる部分は各社によって費用水準が異なるため、金融機関を選ぶ際のポイントになりますが、最近は無料とするところが増えてきました。

その点に関して、NISAでは制度の運営に関する費用はそれほどかかりません。金融機関にとって非課税扱いのための管理は必要ですが、年金制度に関する運営負担はないためです。その点では、各金融機関を費用面で比較して選ぶ必要性はiDeCoほど高くありません。

それ以外の違いとして、NISAつみたて投資枠の場合には、金融機関毎に採用されている投資信託の数、積立頻度、最低積立金額があります。これらについても、ネット上では金融機関ごとにこれらの比較がされています。普通に考えると、利便性が高いほうをおすすめされるかもしれません。たくさんの投資信託が採用されていて選択肢が多い、積立の頻度が月に一回の指定した日よりも、こまめに何回にも分けることができる、最低積立金額が1万円単位よりも100円単位のほうが使いやすい、このように思ってしまいます。もちろんそれは間違いではないのですが、よく考えてみると、実はそこまでこだわる必要はないことが分かります。

積立頻度については、長期で投資をすることを前提にしているのであれば、月に1回の積立頻度でも十分です。それをあえて月に5回に分けて行うことにこだわるメリットや必要性は大きくないでしょう。長い目で見れば、その違いは小さなものです。最低積立金額も同様です。100円から積立できるのであれば、ほんの少額からでも始められるので、顧客にとっては嬉しいかもしれません。ただし、資産形成のためであればそれなりの金額、たとえば1万円単位にしたいものです。少額で積み立てることは資産形成にはならないからです。100円を月に10回、それを20年間続けても24万円となり、金額的には大きくありません。

これは、おつりなどの小銭やポイントを自動的に積み立てる仕掛けを否定しているものではありません。少額をコツコツと積み立てる狙いは、「ちりも積もれば山となる」アプローチなので、その目的には適っています。しかし、NISAはそういうことを主眼にした制度ではなく、非課税による長期投資で将来のための資産形成を行うことをうたったものです。それであれば、その目的に適った大きさの金額で取り組みたいということです。

サービスの充実さを無理矢理に否定するつもりはありませんが、NISAでつみたてを行う場合には、過度な利便性が必ずしも求められるわけではないので、こういった点にこだわりすぎる必要はないです。ネット証券は利便性を備えているのでその優位性をアピールするでしょうけれど、私たち利用者も賢くなりましょう。

ただし、金融機関によっては運用商品である投資信託の採用数がかなり少ないケースも稀にあります。そういった中でも、スタンダードなインデックス運用の商品は含まれているはずですが、念のためご確認されるとよいでしょう。

***

勝盛政治著『新NISAでつみたては会社員の最強アイテム』(高橋書店)