時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは岡山県の60代の方からのお便り。ある日、日課の早朝ウォーキングの途中、お手洗いに並んでいると――。

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和式便所で筋トレを

今年は暖冬傾向と言われていたが、その日は昼間から低温注意報が発令されていたほどの寒さ。日課の早朝ウォーキングを最近サボりがちなので、バスと徒歩でゆっくり季節の空気を感じようと出かけた。

早朝ほどの寒さではないものの、冷え性の身には痛いほどだ。しんとした冷たい空気は、顔や手などわずかに露出した部分の熱を奪い去っていく。

自然、お手洗いの頻度も増してくる。バスセンターでの待ち時間にお手洗いへ。寒さのせいもあってか案の定、5、6人もの行列だ。

すると先頭の年配の女性が、「一番奥が空いてますよ。よかったらどうぞ」と二番目以降の人に声をかけてきた。はて、と思い見ると、たしかにドアは開いていて、一番奥だけが和式便所であることに気がついた。

20代、30代の人たちが次々と「いえ、いいです」と断っていく。そして、私の番。「あ、はい。ありがとうございます」と数人の横を通り和式へ。先頭の女性いわく、「どうも和式は足腰に響いてねぇ」と。

こういった場面には何度か遭遇したことがある。中高年の女性ならわかるが、20代、30代の若い人たちまでもがほとんど和式を利用したがらない。小さい頃からすでに洋式だったのだろう。その昔、洋式が出回りはじめて、移行していった頃、母は「これは楽じゃわ」と喜んでいた。

亡き夫も若い頃の事故で膝に傷があり、曲げるのが少し不自由だったため、洋式のほうが快適だったようだ。私はといえば、洋式に慣れるのに時間がかかり、戸惑っていたことを思い出す。

年月が過ぎ、どこへ行っても洋式ばかりの現在、衰えつつある大腿四頭筋に刺激を、と言わんばかりに、昨今希少となってしまった和式を喜んで利用する私である。

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