医者にして芸人という特殊な経歴の持ち主であるしゅんしゅんクリニックPさん。『さんまのお笑い向上委員会』のモニター横に華麗な経歴で登場、個性的な歌とダンスで爪痕を残し一躍人気になった。ご自身が大台に乗るという今年『40歳になるとなぜ健康の話ばかりしてしまうのか?』を上梓した。どうして医師免許という手堅い資格を持ちながら、芸人の道にも入ったのか。人とは違った選択をすることになったルーツ、二足の草鞋生活の勘どころについて聞きました。(構成◎岡宗真由子 撮影◎本社 奥西義和)

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家族は「いや、無理でしょ」と

芸人になる件について、意外にも両親には反対されなかったですね。反対されなかったというより、反対させない道筋を歩みました。NSC(吉本芸人の養成所)に願書を出して、もう入学が決まってからの事後報告です。…もちろん、とても驚いていました。なにしろ家族の前の僕は、ひょうきん者ではなく至って真面目なんです。なんだったら家族を笑わせたことは一度もない(笑)。見ているテレビから僕がお笑い好きなのは分かっていても、やりたい側の人間だというのは全く気づいていなかったと思います。

父は、一度工学部を出て建築関係の仕事をしてから、もう一度共通一次試験を受け直して医大に入り精神科医をしています。母は僕ら兄妹を育て終えてから看護学校に入り、看護師になりました。妹は故郷で公務員をしています。堅実な家族の元に生まれた僕が、誰に似たかというと不明なんです。けれど人生のレールが決まったと思う地点から、もう一度違う世界に飛び込む勇気というか、そこに抵抗がなかったのは、両親の影響があったのかもしれません。

父はギターを弾いて歌って、勤めている病院でクリスマスにライブをしたりするので、本当は表に立ちたい人間だったのかもしれません。僕もそんな機会には一緒にベースを弾いて父を盛り上げています。今でも家族の前で歌って踊って舞台に立つのは恥ずかしいのですけれど、母はチケットを自分で手配して応援にきてくれています。