昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど、『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。今まで自分で働いて自分の食い扶持を稼いできた独身女性たちは、定年後の住まいをどう考えているのでしょう。それぞれ個別の事情もあるでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。

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前回「田舎で一人暮らしの老母が心配、地方出身シングル女子の迷い、実家に戻るか東京に残るか、それが問題だ」はこちら

外資系企業勤務のバリキャリ、ケイさん

地方出身女子の場合、定年で実家のある地方に戻るか、東京に残るかで悩む、というケースを前回(第7回)、紹介しました。戻るも残るも一長一短。それぞれにメリット・デメリットがあります。決断に悩む女性も多いでしょう。

そんな中、60歳定年を前に、定年後は実家のある地方に戻る、とすでに決意した女性もいます。九州出身のケイさん(仮名、58歳)がそうです。来年秋には両親の敷地内に自邸を完成させようと、これから工務店を決めるところです。

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「戻って家を建てるって決めたんです。来年10月に竣工させる予定です」

こう朗らかに宣言するのはケイさんです。外資系企業の部長。バリバリに働いています。日本の子会社でなく、海外の本社採用なので、定年は60歳。役員になるとその後も働くことになりますが、ケイさんは先手を打って、すでに本国にいる直属の上司に「60歳で辞める」と宣言してあります。辞めたら転職もせず、すっぱり東京の生活を閉じて、実家のある九州に戻るといいます。実家の敷地内に、ケイさんの独り暮らし用に、平屋の家を注文建築で建てる計画です。