肉や魚だけでなく、卵や乳製品も含めて動物性食品を食べないビーガン(完全菜食主義者)が海外だけでなく国内でも増えている。ビーガン向けのメニューを提供する飲食店は近年、福井県内でも続々とオープンしている。県内の店舗を巡ってみた。

■移住者が開店

 記者が調べた限りでは、県内でビーガン料理を提供する飲食店は現在計7店舗で、ここ5年以内に4店舗が出店している。それぞれがインスタグラムフォロワー数が千人以上1万人未満の「ナノインフルエンサー」で、積極的に情報発信している。

 「ビーガン料理にマイナスなイメージを持ってる人もいるが、ビーガンじゃない人が食べてもおいしいと感じてもらえるものを提供したい」

 こう話すのは小浜市の「Cafe Seasons」の店主、太田尚世さん(36)。小浜の自然に魅了され、東京都内のビーガンレストランでシェフをしていた夫の直哉さん(47)とともにIターンし2019年12月にオープンした。

 同市まちの駅・旭座内にある店舗に赴き、オリジナルパスタを注文。米粉の麺がもっちりとして無農薬バジルの風味がたまらない。トッピングのケールのチップスがやみつきになる味わいで、植物性食材のみで作ったとは思えないほどおいしく、食べ応え満点だった。

 直哉さんは「料理には塩こうじなどを使い、しっかりした味つけを心掛けている。一口食べてがっかりさせないようにしたい」と話す。

■「みんな食べられる」

 22年5月にオープンした池田町のカフェ「ココラカラ」の店主、清水貴子さんは「アレルギーや宗教などいろいろな理由で肉が食べられない人もいる。みんなが食べられるものを作りたいと思った」と振り返る。

 同町まちの駅「こってコテいけだ」のチャレンジショップで飲食店をしていたとき、肉が食べられない客に出会い、ビーガンメニューを作ろうと考えたという。

 店では週初めに地元で取れた旬の野菜を使ったランチを提供。記者は、取れたてのカブとユズのあえ物や、町産大豆のスパイシーカレーなどを堪能。締めに米粉のケーキなど「ビーガンスイーツ」もいただき満腹になった。

■必要とする人も

 坂井市のカフェ「ことこと」を訪れると“ビーガン仲間”に出会った。

 福井市の女性(43)は、20代前半のころに病気で体調を崩し、自身の食を見直しベジタリアンになったことを教えてくれた。さらに、妊娠・出産を経て体の変化があり、卵と魚介類が食べられなくなったという。野菜中心の食生活にしてからは▽食後の消化が早い▽体が重たくなくなった▽生理痛がなくなった―などの体調への良い変化を実感している。

 年齢を重ねても運動し続けられるようにと健康のためにビーガンを始めた記者だが、本当にビーガン料理を必要としている人がいることをあらためて感じた。

 取材を通し「ビーガン料理を夜食べられる店は福井にないのかな」とふと思った。7店舗は全て日中のランチ営業。北陸新幹線が県内開業し、菜食を好む訪日客や県外客もやってくる。飲食店では通常メニューに加えてビーガン対応メニューも用意し、もてなしたいところだ。