リニア中央新幹線のトンネル掘削工事で地下水位低下問題に揺れる岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町の住民は、問題発覚以降、JR東海の対応に振り回されてきた。住民からは「もっと環境に配慮して」と不満の声が上がる。

 「湧水対策にしても、薬液注入がうまくいかなかった場合の対応策は示されていない」。大湫町に暮らす50代女性はJRの姿勢に憤りを隠さない。

 工事が中断し、現時点で焦点となっているのは▽トンネル掘削現場で続く湧水を、薬液注入で止めることができるのか▽止まった場合には、水が元通りに井戸や水道の共同水源へ戻ってくるのか−の2点。

 ただ、県環境管理課はJRが並行して進めるべきことは幾つもあると指摘する。例えば、より広範囲で影響が出ていないかの実態調査。「現実に湧水が続いている中で、地下水位の低下の影響範囲がさらに広がっていると考えることは当然だろう」。原因究明につながる地質や地層の詳しい調査・分析も求められるという。

 瑞浪市内の工事を巡ってJRの見通しの甘さも浮かび上がる。JRは工事前の2016年にまとめた環境保全計画書で、瑞浪市を通過するトンネルは、ほとんど地上から100メートル程度の深さで地下を通過するため「(瑞浪市に多い)10メートル以下の浅井戸には、ほとんど影響がないと考えられる」と見立てていたが、外れた。

 今後は、周囲の意見を傾聴しながら、よりシビアに先行きを見通して対応していく姿勢が不可欠だ。大湫町区長会長(67)は「県環境影響評価審査会のゴーサインがなければ(トンネル掘削)工事の再開はない。JRには県や瑞浪市と連携し問題解決を早急に進めてほしい」と願った。