【大人の家庭科】#1

 人生100年時代を健康・快適、豊かに過ごすには、日常生活に必要な衣食住並びに家族に向き合うための最新の知識と技術の習得、そして日本人ならではの季節ごとの伝統的な感性を磨くことが不可欠だ。改めて専門家に聞いてみた。

 4月は、さわやかな風が吹くすがすがしい季節。部屋をきれいに片付けて心機一転、新生活を始めるのによい時期です。

 部屋の状態は心の状態を表すともいわれるように、片付けはメンタルヘルスにプラスに働きます。たとえば、散らかった部屋は「怠惰な自分」の表れで、その自分に対するイライラを解消するために必要以上のカロリーを取ってしまうという報告もあります。睡眠にも関係するようです。片付けは、それらを防いで心を軽くして、自己肯定感を高め活力を生むと考えられています。

 けれど、片付けが苦手な人が多いのも事実。どうすればいいのでしょうか?

 部屋をきれいに保つ秘訣は、モノのしまう場所を決めておき、使ったらしまう、不要なモノは処分する、というのが基本です。片付け上手の人は、無理なくそれらができて片付いた状態をキープできるようです。

 ところが片付けが苦手な人は、いつの間にかしまう場所の決まっていないモノが部屋にあふれ、また長い間使っていなかったモノを処分すると急に必要になって後悔、ということが起こります。現代のようにモノの多い暮らしの中で、しまう場所や処分するかどうかを考えることは、ストレスとなってしまうかもしれません。

 そこで、部屋全体を常にきれいにすることが苦手な方には、部屋の中で1カ所だけ場所を決めて、そこだけはきれいに保つという方法をお勧めします。手頃なのはチェストや棚の上で、そこに自分の好きな小物や写真、絵などを飾って“見せる場所”とすることです。

 インテリアの世界ではそのような場所を「フォーカルポイント」(Focal=焦点となる、Point=場所・地点)といいます。ある空間に入ったときに視線の集まる場所のことを指し、リビングや玄関などにフォーカルポイントを設けることが推奨されています。お気に入りのモノだけの場所は、楽しくきれいに保つことに力を貸してくれるでしょう。

 大事なことは、飾ったモノ以外の、たとえば郵便物や一時使う資料など、“しまうほどではないモノ”を絶対に置かないこと、気に入ったモノだけの場所として死守することです。部屋の中の好きなモノだけの不要なモノがないきれいな場所は、そのとなりのスペースもきれいにしたくなる、という好循環を生むこともあります。

 モノとの付き合い方は、自分自身と向き合うことでもあるといわれますから、ストレスなく楽しく付き合うようになりたいですね。

 そして、お部屋をきれいにするもうひとつの秘訣は、お客さまをお呼びすることです。家族以外の人をお招きして、すっきりした部屋で新生活を楽しむというのも一興といえそうです。

(山村美保里/愛国学園短期大学非常勤講師)