【時間栄養学的「気になる食品」】甘酒

 日本の伝統的な飲み物のひとつ甘酒は「麹甘酒」と「酒粕甘酒」に大きく2分されます。特に麹甘酒は古墳時代から存在していることがわかっていますが、その作り方が記されている最古の資料は江戸時代のものになります。蒸米、麹、水を混ぜ合わせ、発酵させると書いてあります。発酵の過程で麹中の酵素が米のデンプンを分解し、ブドウ糖になり甘さが生まれるのです。

 甘酒はもともと醴(あまざけ・こざけ)、甘九献(あまくこん) 、古佐介(こさけ)などと記していましたが、江戸時代には街角で甘酒を売る風景が描かれるとともに「甘酒」という記述があることから、江戸時代後期に登場した漢字と言えるでしょう。

 昭和に入ると、酒粕を砂糖で調味した「酒粕甘酒」が主流になりました。酒粕甘酒は日本酒製造後に残る酒粕を利用して作られます。酒粕には麹が含まれていますので発酵過程は同じですが、酒粕にもともと含まれていた、タンパク質、葉酸、ビタミンB群、食物繊維などの栄養素が米麹甘酒よりも豊富に含まれます。

 また、米麹甘酒にはない「レジスタントプロテイン(水溶性食物繊維のような働きをするタンパク質)」も生成されることがわかっています。食べた物に含まれる脂質や油を小腸でキャッチし、包み込むようにして体外へと運び出す働きがあるので、コレステロール値を低減したり、肥満を抑制したりする作用が期待できます。腸内細菌活性化のためには、朝に水溶性食物繊維を取ることがおすすめ! レジスタントプロテインもぜひ朝に摂りたいですね。

 また、血行改善や血圧調整が期待されるピンク色の「紅麹甘酒」、ほんのり甘く、すっきりとした後口があり、クエン酸が豊富で疲労回復に効果があるとされる「黒麹甘酒」、香ばしい風味があり、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富な「玄米甘酒」、肝機能、目の疲労回復、血液サラサラ効果があるといわれているアントシアニンが豊富な黒米などの古代米を使って作られる「古代米甘酒」など、近年の麹ブームとともに麹甘酒の健康効果も注目を浴びています。

 「飲む点滴」とも言われる甘酒の甘さは、朝に飲むことで体内時計をリセットしてくれる働きも期待できます。休日の朝に飲むのも良いでしょう。

(古谷彰子/愛国学園短期大学准教授・早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員)