白い歯には清潔感があり、見た目も若く感じられる。それを維持している人はお金があり、自己管理ができていて信頼できる人のイメージがある。そのため、欧米では昔から口元にお金をかける習慣があるが、日本でも最近は世代に関係なく歯のホワイトニングを希望する人が多いという。どんなやり方があり、いくらかかるのか? ウエダ歯科(静岡県沼津市、北海道大学歯学部卒)院長の上田貴彦氏に聞いた。

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「歯を白くする方法は歯の表面を削ってセラミックを貼り付けたり、インプラントするなどさまざまな方法があります。しかし、単に歯を白くしたいだけなら健康な歯を削ることは感心しません。いま人気のホワイトニングは加齢や飲食物による着色を、歯を削ることなく専用の薬剤などを使って上下の歯を白くする方法です」

 そのやり方は大きく2つある。ホワイトニングサロンと呼ばれる店舗に行き、自分でホワイトニングするセルフホワイトニング(以下セルフ)と、歯科医師や歯科衛生士の資格を持った人が行う医療ホワイトニングだ。

「両者の最も大きな違いは、学術的に歯を白くする効果が認められている過酸化水素や過酸化尿素が使えるかどうかです。有資格者が行う医療ホワイトニングでは使えますが、セルフでは使えません。そのぶんセルフでは歯の白さを実感しにくくなります」

 過酸化水素や過酸化尿素を含む薬剤を歯の表面に塗ると薬剤が歯の内部に浸透し、歯の色を決めている色素が科学的に分解されて歯の内部から白くなる。しかし、セルフに使われる薬剤には過酸化水素が含まれておらず、歯の表面の着色汚れを落とすことが目的となる。そのためセルフでの効果は自分の歯が持つ白さには近づくものの、それ以上の白さは望めない。とくに加齢による着色は歯の表面でなく全体に及んでいるため、効果の実感は得られないという。

 また、セルフは自分で行うため薬剤を均一に塗れずに色ムラが出る可能性がある。ホワイトニングの途中にトラブルが発生してもセルフでは治療ができない、というデメリットがある。

「このため、セルフを行ったが満足できず、医療ホワイトニングを行う人は少なくありません」

■神経を抜いた歯にはウォーキングブリーチ

 医療ホワイトニングには、すべての工程を歯科医院で行うオフィスホワイトニングと、歯科医師の指導の下で自宅などで行うホームホワイトニング、2つのやり方を併用するデュアルホワイトニングの3種類がある。虫歯や外傷などで歯の神経を失った失活歯の場合、変色すると普通のホワイトニングでは効果が出ないため、ウォーキングブリーチと呼ばれる特殊な方法を行う場合もある。

「オフィスホワイトニングは結婚式や商談など目前のイベントに白い歯で人前に立ちたい、という人にお勧めです。1時間前後の施術では専用の薬剤を歯の表面に塗った後にレーザーで光を当てます。色素を分解する化学反応を強めるためです。この方法で数カ月間、白さを維持できます。ホームホワイトニングは、初回の通院を除いては歯科医院で作ったマウスピースに専用の薬剤を塗布して歯に装着することで歯を白くします。歯が白くなるまで時間はかかりますが、自分のペースで行え白さが長持ちすることがメリットです。多忙で歯科医院へ通いづらいという人にはお勧めです。デュアルホワイトニングはその2つの特性を兼ね備えています。費用はかかりますが、結果的に当院ではデュアルホワイトニングを選択する人が多くなっています」

 オフィスホワイトニングは、その直後から白い歯を実感できるものの、コーヒーやカレー、焼きそば、イカ墨パスタ、味噌ラーメンなど色素のある飲み物や食べ物を取ると再着色する。そのため施術後24時間は喫煙を含めてこれらの食べ物は控える必要があるという。

 医療ホワイトニングは基本的に治療でなく審美となるため公的健康保険は利かない。費用は全額自己負担で、歯科医院ごとに異なるが数万円かかるのが一般的だ。

 ウォーキングブリーチは根の治療で歯の内部に残った薬剤を取り除き、漂白剤を入れ、1〜2週間ごとに漂白剤を入れ替える作業を2〜3回行うことで歯を内部から白くする。納得する白さになったら、漂白剤を取り除き穴をふさいで歯を密閉する。こちらも公的健康保険は利かず全額自己負担で1回数千円が一般的だ。

「医療ホワイトニングを希望される方の中には、歯を内部から白くする過酸化水素や過酸化尿素が体内に残留して何か悪さをするのではないか、と疑う人がいますが心配はいりません。過酸化水素は口腔内で酸素と水素に分解され、過酸化尿素も過酸化水素と尿素に分解されるため、体に害はありません。ただ、ホワイトニングした人の中には知覚過敏の症状を訴える人もいます。これは歯を白くする薬剤が歯の内部に浸透して神経を強く刺激するからです」

 知覚過敏の症状が長く続いた場合は歯髄炎を発症している可能性もある。そのときは歯科医に相談することだ。