レスリング女子53キロ級で公式戦133連勝中の藤波朱理(20)=日体大=が1日、都内で約1か月半ぶりに本格的な練習を再開した。パリ五輪で53キロ級の決勝が行われる8月8日(日本時間8月9日未明)まで、1日であと100日。3月に右肘を負傷後、初めてとなるマットでのレスリング練習を終えてスポーツ報知の単独取材に応じ、試練を乗り越えて金メダルをつかむ決意を示した。

 約1か月半ぶりにマットに戻った藤波は、晴れやかな表情で練習を終えた。3月14日の練習中に右肘を脱臼し、受傷から5日後の同19日に手術を受けた。その後はリハビリや下半身のトレーニングに専念し、順調に回復。本格的な練習再開の日を迎え、「楽しかったですね。レスリングができない期間が本当に長かった。息はすごく上がったけど、本当に楽しい、楽しいっていう感覚でした」と笑顔を見せた。

 けがをした当初は落ち込んだ。五輪前最後の実戦となる予定だった4月のアジア選手権(キルギス)も欠場。初の五輪に向け、不安が募るのは当然だったが「けがをしたのは自分にとって意味のあることだと思う。パリで金メダルを取るための試練だなっていうふうに考えた」と発想を切り替えた。リハビリに励むとともに自身の試合の映像を見返し、客観的に分析。「立ち止まって考えるいい機会になった。レスリングができることが当たり前じゃないというのも学べて、すごく充実した1か月半だった」と振り返った。

 周囲の支えも大きかった。母・千夏さん(55)の前向きな言葉やチームメートらに元気づけられ、SNSを通じて寄せられる応援メッセージにも力をもらった。「自分のためにやるのはもちろん、応援してくれている人たちの笑顔を見るためにも頑張りたいなと、あらためて思った」と決意は強まった。

 パリ五輪で女子53キロ級の決勝は8月8日(日本時間9日未明)に行われる。「今日で金メダルを取るまで100日。どんな100日になるか分からないけど、いいことも悪いことも全部を楽しんで、このけがをして良かったと言えるように頑張りたい」。1月の東日本大学女子リーグ戦以来の実戦となる今夏の本番へ。逆境を力に変え、輝いてみせる。(林 直史)

 ◆藤波 朱理(ふじなみ・あかり)2003年11月11日、三重・四日市市生まれ。20歳。父・俊一さんの影響で4歳からレスリングを始める。三重・いなべ総合学園高から日体大へ進む。全日本選手権は20年から3連覇。世界選手権は21年オスロ大会、23年ベオグラード大会で金メダル。23年杭州・アジア大会優勝。164センチ。家族は両親と兄。