ドジャース・大谷翔平投手(29)の銀行口座から巨額の金を盗んで不正送金したとして銀行詐欺などの罪に問われた元通訳の水原一平被告(39)が14日(日本時間15日)、罪状認否のためにロサンゼルス連邦地裁に出廷した。すでに罪を認める司法取引に応じているが、この日は手続き上の理由から形式的に無罪を主張した。司法省によると、次回審理で罪を認める見通しだ。

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 注目された水原被告の罪状認否はたった5分ほどで終わった。判事から「イッペイ・ミズハラ、この発音で合っているか」という最初の質問に「That’s right(合っています)」と答えると、その後4問には担当のJ・ローセンブラス判事が女性だったことから「Yes, ma’am(はい)」と返答するなど、滞りなく審理は進んだ。

 最後には「罪状に書かれた罪を認めるか」を問われ「Not guilty(無罪です)」。すでに司法取引で約1700万ドル(約26億4400万円)を盗んだことや、課税所得を虚偽申告していたことなどを認めている。だが、治安判事のローセンブラス氏には法定刑の上限が禁錮1年以上の「重罪」を取り扱う権限がない。水原被告の最高刑が禁錮33年に及ぶため、今回は予定通り、形式的に無罪を主張した。次回審理では、重罪を扱う権限を持つ連邦判事の前で、罪を認める見通しだ。

 裁判所に出廷した4月12日(日本時間13日)以来、約1か月ぶりに姿を見せた。審議開始約30分前の、現地時間午前11時すぎに法廷のあるビルに車で到着した。黒のスーツ、白のシャツでノーネクタイ。約80人の報道陣に囲まれながら、口を開くことなく弁護士のM・フリードマン氏とともに11時11分に法廷に入った。

 報道陣にも混乱が起きた。4月の初出廷では報道陣を含めて約60人が傍聴できたが、今回は初出廷時と同じ法廷前に集まった日米の約50人の報道陣に別室への移動が指示された。米国記者を中心に日米46人が「ジャーナリズムの権利の剥奪(はくだつ)!」として署名した抗議文を判事に提出。それでも「安全上のリスクがある」として、報道陣は別室で11時43分から流れた法廷の音声を聞くのみだった。

 閉廷後、ビルの外では報道陣が殺到。「大谷選手への謝罪について、自身の言葉で声明を」「ファンにひと言」などと矢継ぎ早に日米メディアから質問が飛んだ。カメラマンが転倒するハプニングもあったが、表情を変えることなく無言で歩き続け、車に乗り込んだ。

 米NBCテレビによると、大谷本人が連邦地検に対し、書面で詐欺行為が自身に与えた影響を説明する動きもあるという。流動的な部分もあるが、水原被告は6月14日に再び出廷の予定。そこから判決までは長ければ数か月を要する見込みだ。