◆明治安田J1リーグ▽第18節 横浜FM1―3町田(15日・日産スタジアム)

 町田が横浜Mに3―1で逆転勝ちし、首位の座を守った。天皇杯2回戦・筑波大戦(12日)ではPK戦の末に敗退。骨折の2人を含む4人の負傷者が出たことに対し、黒田剛監督(54)がレフェリー、筑波大の選手や指導者を批判する発言で物議を呼んだが、気持ちを切り替えて難敵から勝ち点3を奪った。SNSなどでも大きな反響と、批判も集まった中でつかんだ勝利を、町田担当の金川誉記者が「見た」。

 町田は“見えない敵”との闘いにも勝利した。3得点した横浜M戦後、アウェーまで駆けつけた約3000人のサポーターたちと喜ぶ選手、スタッフの姿を見て、そんな思いに駆られた。先制点を許したが、セットプレーからDF昌子、U―23日本代表の米国遠征から戻ったFW藤尾が決めて逆転。最後はMF下田の直接FKで突き放した。球際のバトルや走力でも相手を上回り、黒田監督は「今日は町田らしいサッカーをあらためて確立できた」と振り返った。

 12日の天皇杯・筑波大戦で敗退した後、黒田監督がけがを誘発したファウルや判定を批判したことを発端に、SNSは大炎上。球際での戦いを重視する町田は、今季J1リーグで3位のファウル数(245回=試合前時点)。筑波大戦でも試合開始早々に町田側にも激しいファウルがあったことから、逆に批判の声も上がっていた。

 J1昇格1年目、選手たちも複雑な思いを抱えていた。MFバスケスは「僕たちも苦しいですけど、一番はサポーターが、応援しているチームを批判されてつらいだろうな、と」。しかし、チームとしての足並みは乱れなかった。試合前には、主将の昌子がファウルをすればブーイングが起こることも想定し「それで緩んだら負けるぞ。彼ら(負傷した選手)の分も戦うぞ」と訴え、一瞬の出足が緩まぬように引き締めた。

 この日の試合後、黒田監督はこう話した。「町田ゼルビアは決して悪ではないし、我々が正義で、言いたいことを言いながら、ダメなものははダメと訴えながら貫いていく。これが日本サッカー界に必要なパワーだと思う。我々が勝つために志向しているサッカーを信じたことが勝利の要因」。この試合後には、筑波大戦で負傷した4選手のユニホームを一部の選手が身につけた。チームやサポーターへの思いが、町田の持ち味と言える攻守のハードワークにつながった。23年の黒田監督就任以来、一度も公式戦の連敗はない。周囲の声にもブレないスタイルを貫くことが、J1首位を走る原動力であることは間違いない。(金川 誉)

 ◆天皇杯2回戦・町田―筑波大VTR 町田は前半22分にMF安井のゴールで先制するも、負傷者続出により10人となった後半アディショナルタイム(AT)に追いつかれた。追加での選手投入が可能となる延長戦で再び11人対11人になったが、スコアが動かないままPK戦へ。筑波大が4―2のスコアで勝ち上がりを決めた。試合後の会見で、黒田監督が筑波大のラフプレーや言動に憤りを示した。町田は翌13日、2人の骨折を含む4人の長期離脱を発表した。