yukihiroというマルチプレイヤー

 バンド最大の危機を迎え、活動休止状態からの同年12月、東京ドーム公演にて復活。yukihiroがサポートを経て正式ドラマーとなった。ZI:KILL、DIE IN CRIESと、ヴィジュアル系黎明期の一時代を築いたレジェンドドラマーが新時代を担うバンドに加入した当時の衝撃は凄まじかった。と同時に、納得もいく人選であった。

 yukihiroのドラムだけに収まらないマルチプレイヤーの才覚、マニピュレーターとしても活動していた類まれない音楽センスはバンドに大きな影響を与えた。「花葬」、「侵食 ~lose control~」(ともに1998年7月リリース)、「forbidden lover」(同年10月)といった、初期L’Arc〜en〜Cielの幻想感と、yukihiroが持つ退廃的要素を融合させたダークさを醸す楽曲が次々と生まれている。

L'Arc〜en〜Ciel「forbidden lover」(1998年)

 1999年7月に同時リリースされた6thアルバム『ark』と7thアルバム『ray』の反響は凄まじく、トータルで600万枚のセールスを誇る大ヒットを記録した。

日本が誇るモンスターバンド、L’Arc〜en〜Ciel

 この頃になるとバンドのロゴが物語るように、初期の幻想感は薄れ、カラフルでポップなビジュアルイメージへとシフトしている。特にtetsuyaのサイバーファッション(近年の“Y2Kリバイバル”ファッション)は、hide、GLAYと並び、当時のロックファンに大きな影響を与えた。Buffalo LONDONのtetsuya(当時はtetsu)モデルの厚底スニーカーは男女問わず、みんな憧れたものである。

L'Arc〜en〜Ciel「HEAVEN'S DRIVE」(1999年)

 2000年代以降のL’Arc〜en〜Cielは、海外にも及ぶ絶大な人気と巨大化した活動規模とともに、スローペースになっていくものの、現在も我々を魅了し続けている。初期のイメージとは異なるが、根幹にあるロックバンドとしての魂は変わっていない。むしろ“浮世離れしたロックスター像”と“ミステリアスな存在”という部分はより強力なものになっている。

 日本のバンドなのに、どこか海外バンドの雰囲気とロックスターなカリスマオーラを放ち続けているモンスターバンド、それがL’Arc〜en〜Cielである。

(冬将軍)