聞きなれない「軽度認知障害」という言葉。聞けば、「認知症」の一歩手前だという。65歳以上の6人に1人が認知機能にトラブルを抱える今、少しでも進行を食い止めるには――。
2022年時点で、65歳以上の認知症の高齢者の数は、443万人。厚生労働省が5月8日に公表した研究資料には、認知症にまつわる推計の数値が、このように記されていた。
全国紙・社会部記者が言う。
「団塊ジュニア、つまり現在のアラフィフ世代が65歳以上になる’40年には、『認知症』の高齢者の数が584.2万人、割合にして高齢者の14.9%が認知症になっているだろうという推計が出ました。同時に、同資料では、’40年の『軽度認知障害』の患者数が約612.8万人と、高齢者の15.6%にのぼるだろうという推計も示されました。こちらのほうが驚きです」
’60年には認知症の人が645万人、軽度認知障害の人が632万人と推計されている。
認知症に関しては、誰しもある程度の認識はあるだろう。だが、この「軽度認知障害」なるものがどんな状態なのか、認知症なのか、はたまた別のなにかなのか……。はじめて目にする読者も多いのではないだろうか。
認知症の予防に詳しい神戸大学大学院保健学研究科の古和久朋教授が、こう説明する。
「軽度認知障害(以下、MCI)とは、認知機能の低下があって、健常な状態ではないものの、認知症と診断されるわけでもない、グレーゾーンの状態を指します。ただ、そのまま放っておけば認知症になる可能性が高い状態といえるのです」
MCIとは、具体的にどんな状態で、なぜ「放っておけば認知症になる可能性が高い」のか、古和教授に詳しく聞いた。
■日常生活は送れるMCIとはどんな状態?
「4大認知症のひとつで、患者数の割合が多いアルツハイマー型認知症の場合、ある日突然なるものではなく、20年ほどの長い期間を経て発症することがわかってきました。その認知症の『一歩手前の段階』がMCIです」
認知症が「日常生活を一人で送ることが困難な状態」だとすれば、MCIは「日常生活は送れるけれど、家族などに同じことを何度も尋ねたりして多少の面倒をかける状態」なのだという。
「アルツハイマー型認知症では、脳にアミロイドβという老人斑がたまっていくことで、徐々に物忘れがひどくなり、やがて認知機能が低下し認知症になります。この物忘れがMCIの症状で、記憶障害はあっても全般的な認知機能は正常範囲内というのが特徴。
その物忘れが激しくなって認知症に極めて近い人もいれば、複雑な内容をすべて正確には覚えていないけれどもおおよそはほぼ正しく覚えられている人もいます。このどちらの場合もMCIとされるほど、症状の幅はあります」
認知症に進行しないよう、取れる対策はあるのだろうか。
「MCIの状態の場合は、早い段階で適切な診断を受け、適切な対処をすれば、認知機能の改善や維持ができたり、機能低下を遅くすることも可能だと考えられます」
改善、維持……。劇的に治ったりはしないのか。
「認知機能は年齢とともに低下しますが、この低下は正常加齢によるもので、誰しもに起きることです。そんななか、MCIの対策をすることで、認知機能を現状維持し、キープできるというのであれば、それ自体がすごいこと。プラスといえます」
まずは、自分や家族がMCIの状態であるかどうかを、チェックリストに記入して確かめてほしい。8項目中4つ以上当てはまれば、要注意だ。
■まずは生活習慣を整え規則正しい日常生活を
では、私たちはどうすればMCIを予防・改善できるのだろうか。著書に『もしかして認知症? 軽度認知障害ならまだ引き返せる』(PHP新書)などがある鳥取大学医学部認知症予防学講座の浦上克哉教授は、こう話す。
「脳の神経細胞には、生活習慣病が大きなダメージを与えます。特に高血圧、糖尿病、脂質異常症の3つが、認知症とその予備軍であるMCIに悪影響を与えるんです」
これらの病気の共通項は「動脈硬化である」と浦上教授は続ける。
「生活習慣病によって血管や血流に大きな悪影響があり、脳の神経細胞の代謝にも悪影響が出ることで、神経細胞は弱って、死んでいってしまいます。したがって、日常生活を見直すことがMCIの予防・改善に結びつくといえるでしょう」
まずは、規則正しい生活から。
「朝、きちんと起きて歯を磨く、3食バランスよくとる、そして質のいい睡眠を取ることです」
仕事や家事などでは、指先をよく動かす作業が、認知症、MCI予防には重要だ。
「指先を動かすといっても、パソコンのキーボードを打つより、手書きで文字を書いたほうがいい。パソコンは変換機能につい頼ってしまいますから、漢字を忘れたり、字が書けなくなったりするんです」
塗り絵や、クロスワードパズルなども効果的だという。
■適度に筋トレを取り入れ女性ホルモンを上げる
次に、運動も非常に重要だが、ただ長時間歩くだけでは、むしろ逆効果になることもあるというから要注意だ。
「特に65歳以上であれば、『1日1万歩』という目標は多すぎると考えられます。有酸素運動をそこまですると、逆に筋肉量が落ちてしまいますので、7千歩程度にとどめたほうがいいでしょう」
そして、残りの体力は筋力トレーニングやストレッチに充てるべきだと浦上教授。
「特に女性は、高齢になると骨粗しょう症のリスクが出てきます。転倒―骨折―入院となれば、認知症にどんどん近づいてしまいます。ちょっとしたことでの転倒防止のためにも、筋トレは少しでも行うべきです」
そもそも、アルツハイマー型認知症でいえば、「女性が1.5〜2倍と、男性より患者数が多いといわれています」と浦上教授。
「女性のほうが、平均寿命が少し長いのも一因かもしれませんが、やはり女性ホルモンが低下することも関係しているのではないかと思われます。女性の場合の認知症予防や改善に『化粧療法』というのがありますが、人に見られること、おしゃれをすること、集まりなどに出て異性と交流することなども、ホルモンアップに大事です」
チェックリストの記入の結果、少しでも不安があるという人は、日常生活から見直していこう。MCIの予防・改善は、QOL(生活の質)の向上から!
認知機能を維持するための生活習慣!「1日1万歩」が“逆効果”な理由
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