「緊張してる?」

5月17日(日本時間)、ドジャースの大谷翔平選手(29)が、レッズ戦で始球式に登場。心臓病を患う少年、アルバート・リーくん(13)をフォローしながら、彼のボールをしっかりキャッチした。

「アルバート君は生まれつき心臓が弱く、両親には生後3日で将来、心臓を切開する手術を受ける必要性があると伝えられたそうです。最初の手術は無事、成功しましたが、今後も同様の手術を受ける必要があるといいます。現在、アルバート君はリトルリーグで活躍中で、今回の始球式に大谷選手が現れたのは“サプライズ”でした。一時、言葉を失った彼は大谷選手から英語で優しく声をかけられると、『30秒間、呼吸できなかったよ!』と感激していました」(スポーツ紙記者)

心臓病の少年を笑顔にしたこの日、米経済誌『フォーブス』は世界のアスリートの長者番付を発表。大谷は8千530万ドル(約132億円)で13位にランク入りした。

「大谷選手は野球界ではトップで、公表された上位50選手では唯一の日本人でした。年俸など野球収入で2千530万ドル(39億円)、広告収入などで6千万ドル(93億円)の総収入があると報じられました」(前出・スポーツ紙記者)

“大谷効果”は、始球式の試合当日も明白だった。

「この日は先着4万人に、大谷翔平の『ボブルヘッド人形』が配られることもあり、開門2時間以上前から長蛇の列が……。チケットは今季5度目の完売。観客数5万3千527人はこの5年のドジャー・スタジアムで最も多く、今季メジャー全体で最大の動員数でした」(前出・スポーツ紙記者)

まさに名実ともに“世界一のプロ野球選手”となった大谷。そんな彼が早々に取り組まなければいけないことがあるという。『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2024』の著者でスポーツライターの友成那智さんは言う。

「大谷夫妻はチャリティ活動に一層力を入れていく責務があると思います。たとえば、ドジャースの“大先輩”カーショー夫妻はアフリカの恵まれない子供たちのために学校や病院をつくり、オフシーズンには現地を訪れるほどです」

クレイトン・カーショー選手(36)は’08年から現在までドジャース歴17年目となる“レジェンド”だ。

「メジャー通算210勝をあげ、年間最優秀投手に贈られるサイ・ヤング賞を3度受賞しました。彼は投手としての実力だけでなく、人間性も素晴らしいことで有名です。高校時代から交際していたエレンさんと’10年に結婚し、翌年、チャリティイベントの一環でアフリカのザンビアを訪問。そこでHIVに感染した『Hope(希望)』という名前の9歳のホームレス少女と出会い、『Hope’s Home』と名付けた募金活動を開始したのです。

HIVなど病気と闘う子供たちの支援や孤児に食事や住居を提供する活動で、カーショー選手は試合で三振を1つとるたびに100ドル(約1万5千円)を寄付。この年は年間最多勝も記録しました。エレン夫人は学生時代から奉仕活動に熱心な方でした。そのため夫婦で非営利団体『カーショーズ・チャレンジ』を設立して、ドジャースの本拠地・ロスに加え、彼の地元・テキサス州ダラスや、ザンビア共和国、ドミニカ共和国の児童支援を夫妻で精力的に行っています」(在米ジャーナリスト)



■財団の理事長には妻が就任するケースが多い

もともとドジャースは地域の子供たちや困窮者への支援活動に熱心なことで知られる。

「5月3日に、ドジャースのオーナーグループが、ロスの慈善活動を担うドジャース財団に5千万ドル(約77億円)の寄付を約束したと発表しました。また、ドジャースがワールドシリーズに出場した場合は、さらに5千万ドルを寄付するというのです」(前出・スポーツ紙記者)

前出の友成さんが続ける。

「元ドジャースの黒田博樹さんも、両親をがんで亡くしていることから、数万ドル単位で、がん撲滅の寄付をしていました。がんを克服した少女が始球式に登場した後、笑顔で握手を交わしたことも。

いまや“世界一の野球選手”である大谷選手は、カーショー選手と同様の社会貢献活動を期待されます。そのため、“大谷財団”を設立することになるでしょう。メジャーリーガーは夫婦で財団を作り、理事長には妻が就任するケースが多いです。当然、真美子さんにも責任ある立場が求められます。“マミコ&ショウヘイファンデーション”といった名前で基金が設立され、世界の子供たちへの奨学金プログラムや、病院づくりにも力を入れるはずです」

昨年11月、大谷が日本国内の全小学校にグラブ6万個を寄贈したことは記憶に新しい。 だが、大谷夫妻が支援活動を進めるのは日本やロスだけではない。4月中旬、大谷はハワイ島のマウナケアリゾートに26億円の別荘を購入したと報じられた。

「大谷選手はハワイの子供たちへの支援も必要だと考えています。実は新通訳のウィル・アイアトン氏はハワイ育ちでオアフ島のミッドパシフィック高校出身なんです。そのため、ハワイの子供たちが直面している“厳しい経済事情”を大谷選手にも伝えているようです」(前出・在米ジャーナリスト)

一昨年の春、《ハワイ州の子供の約半数が相対的貧困》と題する衝撃的な報道があった。

「全米で社会貢献活動を展開する団体『アロハ・ユナイテッド・ウェイ』が発表した最新の統計で、ハワイ州の子供たちの約半数が、一般的な生活レベルを保つことが難しい相対的貧困世帯で暮らしていることが明らかになったのです。生活保護の対象となる、政府が定める“貧困レベル”を超える収入はあるものの、急激な物価高やコロナ禍による収入減で、生活必需品を買うのに苦労する子供たちの総数は14万人ほどになると試算していました」(前出・在米ジャーナリスト)



■「子供たちの笑顔を見られるのが幸せ」

実は真美子さんもハワイに縁があると明かすのは、彼女の実業団時代の知人だ。

「彼女が所属した富士通は1972年にハワイに非営利の教育研究法人『JAIMS』を設立しました。日米の架け橋となる人材の育成を目的としており、東洋と西洋の文化が融合するハワイを拠点として選んだそうです。

同社は子供たちへの教育に熱心で、スポーツ支援も積極的です。女子バスケットボール部『レッドウェーブ』は、川崎市内の小学生を対象に体育の授業で実技指導を行う『ふれあいスポーツ教室』を定期的に開催しています。もちろん真美子さんも実業団時代には何度も参加して、地域の子供たちと触れ合い、“子供たちの笑顔を見られるのが最高に幸せ”と話していましたね。

そういえば、彼女のコートネーム(試合での呼び名)は“マナ”でした。ハワイでは“マナ”は“他人も自分も幸せにするスピリチュアルなエネルギー”を指す言葉です。彼女のお兄さんもハワイ通だと聞いたことがあります」

前出の在米ジャーナリストはこう語る。

「大谷夫妻は別荘が完成する来年から、オフシーズンはハワイに滞在することになるでしょう。水原一平被告の銀行詐欺事件で、大谷選手は被害者でありながら、米国中を騒がせたことへ申し訳ない思いも感じているそうです。

そこで“第3の故郷”となる地で、困窮する子供たち、病気の子供たちを一人でも多く救えればと、新たな病院や学校設立の支援活動を進めていく考えだといいます」

冒頭の始球式の試合後、大谷は“舞台裏”を明かしていた。

「球団からは『奥さんはどうですか?』って言われていたんです。けれど、本人(真美子さん)と話して『光栄なことですけど、野球好きな子供たちや、あまり見に来られない闘病中の子供たちのほうがよいのでは?』ということで、(彼女の不参加を)決めました」

心臓病と闘いながら、野球を頑張る少年を応援したい――。真美子さんの“世界一の財団理事長”への道は、すでに始まっていた。