令和らしい、人気レストランの条件とは?

すかいらーくグループのしゃぶしゃぶ食べ放題店「しゃぶ葉」 食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、食トレンド、スーパーマーケットやスタバ、ダイエットフード、食育などの情報を“食の専門家”として日々発信しています。

 最近ますます人気になっている外食チェーンがあります。それは、「しゃぶ葉」というすかいらーくグループ(ガスト、バーミヤン、ジョナサンなどを運営)のしゃぶしゃぶ食べ放題のレストラン。

 2007年にスタートして以来、現在は国内に282店舗にまで拡大(2024年5月1日時点)。売り上げはすかいらーく全体でガストに次いで2番目という好調ぶりで、注目を集めています。

6〜7年前から「女子高生に人気のしゃぶしゃぶ屋さん」として話題に

 すかいらーくグループのしゃぶしゃぶ食べ放題店「しゃぶ葉」は、肉だけでなく野菜やサイドメニューが食べ放題になっている このしゃぶ葉について、「しゃぶしゃぶは高そうで、まだ行ったことがない」という人から、「数年前に、ニュースやバラエティ番組で女子高生に大人気と紹介されていたような……」というイメージを持つ人までさまざまでしょう。

 実は最近ますます進化を遂げて、女子高生のみならず、おひとり様から海外観光客まで幅広いターゲットに愛されるように……。

 そこで今回は、数あるしゃぶしゃぶ食べ放題店の中で、しゃぶ葉が圧倒的な人気を集める理由について考察し、その魅力を5つにまとめてご紹介していきたいと思います。

①競合店に大差をつける超コスパ

 肉の種類によって料金設定があり、最低価格は1539円 実はしゃぶしゃぶ食べ放題の専門店は50年前からあり、高級和食であるにも関わらずお財布を気にせずに思う存分食べられることで、じわじわと市場ができつつあるカテゴリー。

 競合店としては、「牛角」と同グループの「しゃぶしゃぶ温野菜」や、「かつや」と同グループの「和食さと」などがあります。3店の最低価格を比較してみると、しゃぶ葉が圧倒的に安いことがわかります。

【しゃぶしゃぶ食べ放題の最低価格を比較】

・しゃぶしゃぶ温野菜→3058円

・和食さと→2189円

・しゃぶ葉→1539円

 ドリンクバーをつけても2000円に収まってしまうことは、女子高生などの若い世代の心をつかむだけでなく、ファミレスや居酒屋に近い金銭感覚で無理なく通えるという強い魅力になっているのです。

 すかいらーくが掲げるミッション「ひとりでも多くのお客様に、安くておいしい料理を、気持ちの良いサービスで、快適な空間で味わっていただく」をもっとも実感しやすいブランドのひとつと言えるでしょう。

 さらに、平日ランチは時間が無制限であること、女性にも人気のアルコール飲み放題が16時までは1319円という細やかな設定も好感度につながっています。



②「野菜がたくさん食べられた」という罪悪感フリーな成功体験が味わえる

 野菜は加熱することでたっぷり食べられる しゃぶしゃぶ食べ放題が成功している要因の一つとして、肉だけでなく野菜も食べ放題である点があります。

 しかしながらそれだけでは十分な顧客満足にはならず、“実際にたくさんおいしく食べられた”という成功体験こそが決め手になっていると考えられます。

 つまり、ヘルシースープで野菜を加熱しながらたっぷり食べられるしゃぶしゃぶのスタイルが、野菜不足を実感している現代人の欲求を罪悪感なく満たしてくれるのです。

 野菜がずらりと20種類以上そろっている しゃぶ葉で食べられる野菜は、常時約20種類。しゃぶしゃぶ用に千切りされたミックス野菜をはじめ、チンゲン菜、ニラ、オクラ、ナスなどの野菜類や、きくらげやしめじなどのきのこ類までそろっています。

③肉をヘルシーに、失敗なく食べられる

 しゃぶしゃぶなら特別なテクニックは必要なく、誰でもおいしく食べられる 同じ人気肉料理である焼肉食べ放題と比較した場合、しゃぶしゃぶの魅力はヘルシーに食べられることだけではありません。

 焼き過ぎて固くなってしまう心配がなく、どんな人でも失敗なく肉を扱えることが満足感の底上げにもつながります。また、網をたびたび交換するなど店側の対応も必要なく、お客がアクとりさえすればスープがどんどんおいしくなっていく魔法の料理とも言えます。

しゃぶしゃぶ しゃぶしゃぶを彩るタレや薬味も充実。たれBARというコーナーにはたれが5種類以上(定番以外にきざみ玉ねぎの香味たれ、自家製梅だれなど)、薬味BARには10種類以上(刻みオクラやザーサイまで!)がそろっています。

 たれBARは、家庭の味脱却に貢献している

④新しい食べ方を楽しめる

 しゃぶ葉自慢のカレーに肉を浸して食べてみたら…… 店内のサラダバーにはロメインレタスとサラダ菜があり、「しゃぶギョプサル」という食べ方を紹介しています。

 つまり、しゃぶしゃぶ肉を使ったおいしい食べ方を発見できることもたのしい食体験に。私はお店自慢のカレー(サラサラとした肉の旨味が効いた和風カレー)に肉を浸して食べるのが気に入っています。

 さらにスイーツコーナーも充実していて、ソフトクリームやワッフル、かき氷などを自分で手作りできるのもワクワクポイントに。隣のテーブルの女子大生に教えてもらい、レインボーソフトクリームを作ってみました。

 スイーツコーナーも充実、アレンジを自由に楽しめる

⑤店員に関与され過ぎない気ままさが心地よい

 しゃぶ葉のほぼ全店舗に導入されているネコ型配膳ロボット「BellaBot」 店内をスマートに動き回るのが、ネコ型配膳ロボット「BellaBot」。実はこのロボットが店内の雰囲気向上に大きく貢献しています。

 子どもから高齢者までがかわいい、楽しい、新しいと高評価で、料理配膳が大幅軽減される従業員にもサービス対応の余裕が生まれます。

 しゃぶ葉でのロボット導入は、しゃぶしゃぶというシンプルな料理配膳と、食べ放題という特性(従業員に関与され過ぎず自由に食べたい)をバランスよく実現できる成功事例と言えるでしょう。

 ちなみに誕生日祝いとして事前予約すると、「ハッピーバースデイ」の音楽を流しながらケーキを運んでくれるサービスまであり、これが新しいスタイルのおもてなしとして人気を集めています。

 このように、しゃぶ葉は圧倒的な低価格と品質バランス、楽しいサービスやしかけ作りを実践しています。今後はファンコミュニティによって顧客満足度をますます向上することを目指しているそうで、新たな取り組みに注目していきたいところです。

<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>

【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12