フォーミュラEに日本人ドライバーとして初めて参戦した佐藤琢磨。それは、2014年のことだった。あれから10年が経ち、日本で初めてのフォーミュラEのレースが開催された……しかも日本初の本格的な公道レースとして。

 その佐藤は今回の東京E-Prixが実現したのは、日本のモータースポーツにとって革命的なことだと語った。

 佐藤はフジテレビの東京E-Prix中継の解説を務めた後、六本木ヒルズで行なわれているF1 Tokyo Festivalの初日に、自らの出演はなくとも足を運んだ。そして、自身がプリンシパル(校長)を務めた鈴鹿サーキット・レーシングスクール(現ホンダ・レーシングスクール鈴鹿)の卒業生であり、今週末の日本GPでF1公式セッションデビューを果たす岩佐歩夢を激励。揃って取材に応じた。

 その際佐藤に、日本初開催となったフォーミュラEのレース、東京E-Prixについて話を聞いた。

 フォーミュラEが創設されたのは2014年のことで、最初のレースは北京で行なわれた。佐藤はこのレースに、アムリン・アグリから参戦。エクゼクティブ・チェアマンは鈴木亜久里、チーム代表はマーク・プレストンと、スーパーアグリF1を彷彿とさせる陣容で、当時注目を集めた。

 このレースで佐藤は、マシントラブルに見舞われ完走扱いとはならなかったが、ファステストラップを記録。つまり、フォーミュラE最初のファステストラップ記録者は佐藤琢磨なのである。

 それから10年。フォーミュラEがついに日本にやってきた。

「本当にすごいことですよ。日本のモータースポーツの歴史の中では、本当に革命的なことなんじゃないかと思います」

 佐藤は東京E-Prixについてそう語った。

「市街地レースがついに実現したんですからね。10年くらい前に、僕も初めてそういう話があるということを聞きました。実現したら良いなと思ってから10年経ちました……フォーミュラEの最初のレースに携わった身としては、やっぱり懐かしさも、感慨深さもあるし……やっとここまで来たかという、そういう想いはすごくありましたね」

 レースの内容も面白く、マシンの進歩も実感したと、佐藤は語る。

「レースもすごく面白かった。マシンのテクノロジーの進歩もすごいなというのも、十分に見て取れました。速くなったし、バッテリーも長持ちするようになった。エネルギーマネジメントのレベルが、めちゃくちゃ上がったということなんだと思います」

「僕が出た時と、やってることは大きくは変わらないんですけどね。ドライバーがどれだけ電力を消費したのかというのをチームに伝えて、それを基に計算して、その結果に合わせて走る……そのやり方は変わっていないんだと思います」

「でも、ゴールする時に0.0%! そこまで使い切るって、本当に拍手です。すごい高いレベルでやってるなと思いました」

 前述の通り、日本で初めての本格的な公道レースが実現した。これが今後続いていくことを期待したいと、佐藤は語る。

「これで前例ができました。確かにフォーミュラEは、パッケージとして都市型でできるようになっている。そういう背景はありますけど、なんでGTやスーパーフォーミュラじゃダメなんだっていう話になると思います」

「スーパーフォーミュラ・ライツだって面白いじゃないですか。マカオも、ジュニアフォーミュラのレースとして持ち上がってきたわけだし、今後日本でああいう形のレースができたら、レースがさらに身近になると思います」

「レースを見たことない、興味はあるけどサーキットまでは行けない……という人たちもいると思います。でも東京E-Prixは”ゆりかもめ”に乗って見に来られたわけですからね」

「ファンとモータースポーツの距離が縮まった瞬間……そういうところが良かったと思います」

 求められるのは、フォーミュラEに参戦する日本人ドライバーの参戦だ。これまで佐藤、山本左近、小林可夢偉と3人の日本人ドライバーがフォーミュラEに参戦したが、レギュラー参戦は皆無。現在はドライバー育成にも携わる佐藤に、フォーミュラEドライバーを育てる可能性について尋ねてみた。

「あえてフォーミュラEを目指すよう、推奨はしないですよ」

 そう佐藤は言う。

「でも、そこを目指したいというドライバーもいるかもしれません。フォーミュラEに参戦しているドライバーは、F1レベルですからね」