オレンジ軍団がようやく今シーズンの初白星を引き寄せた。プレミアリーグEAST第3節。市立船橋高校とアウェイで対峙した大宮アルディージャU18は、開始1分で山中大智のスルーパスに抜け出した右サイドバックの斉藤秀輝が先制ゴールを叩き込む。ただ、油断はできない。開幕節も、第2節も、先制しながら逆転負けを喫しているからだ。

GKの清水飛来が、1年生の中澤凜と3年生の酒井舜哉で組むセンターバックコンビが身体を張り、チームで決定的なピンチを1つずつ凌いでいくと、70分に追加点が生まれる。菊浪涼生のパスを受けた野口蒼流のシュートが、鮮やかに揺らしたゴールネット。最後まで守備の集中も途切れず、終わってみれば2-0で完封勝利。3試合目で手にした勝利に、歓喜が弾けた。

無敗こそ継続したものの、悔しいドロー劇となったのは間違いない。同じくプレミアリーグEAST第3節。ホームに鹿島アントラーズユースを迎えた流通経済大柏高校は、前半から好アタックを連発。14分に稲田斗毅が、25分にも和田哲平がゴールをマークし、2点をリードしてハーフタイムへと折り返す。

だが、後半はやや蹴り合いの流れに付き合ってしまい、3分間で2失点を続けて奪われ、終わってみれば2-2の引き分け。「前半の出足とか、奪い返すところは良いんだけど、後半は『どうしちゃったんだ?』みたいな。2-1になった時にメンタルが『どこ行っちゃったんだ?』って感じでしたね」とは榎本雅大監督。ここまでの3試合は1勝2分け。ここ2戦は引き分けが続いているだけに、今節の勝利に対する渇望感がより増しているのは想像に難くない。

大宮U18で“効いている”のは、キャプテンを務めている左サイドバックの大西海瑠だ。昨シーズンもプレミアリーグは18試合に出場。「自分は攻撃がメチャメチャ得意なわけではないので、守備のところで1対1に負けないとか、球際のところで勝つとか、そういうところが得意かなと思います」とは話すものの、左足のキック精度も高く、ボールを動かすチームの中で攻撃の起点もしっかりと創出している。

前任のキャプテンは昨年から大宮のトップチームで定位置を確保している市原吏音だけに、プレッシャーも掛かることが予想されるが、大西は「吏音と同じことをやるのではなくて、自分は自分らしく引っ張っていけたらなと思います」ときっぱり。副キャプテンに就いていたU15時代からやってみたかったという役割を意気に感じ、チームを牽引する覚悟を定めている新キャプテンのリーダーシップが、グループに一体感をもたらしていく。

攻撃のキーマンとしては登丸楓吾を推す。左サイドハーフに入った開幕戦では、本人も「ミスです。入っちゃいました(笑)」と正直に申告したクロスがそのままゴールに飛び込み、今季初得点を記録すると、今度は右サイドハーフで登場した第2節で正真正銘の“狙った得点”をゲット。勝利に繋がらなかったとはいえ、確かな結果を残して気を吐いた。

参考にしている選手はトッテナムでプレーする韓国代表のソン・フンミン。昨季はプレミアでも21試合に出場し、実戦経験を積んだことで90分間走れる体力も付いたというアタッカーは、「今シーズンもサイドで仕掛けて、ゴールを獲ったり、アシストができればいいなと思います」と意欲も十分。市立船橋戦でも多くのチャンスを作っていた斉藤と登丸が組む右サイドは、大宮U18が繰り出す攻撃の生命線であり、今節でも勝敗のカギを握ってくるはずだ。

2024年の流通経済大柏の10番は、柚木創に託された。昨季はU-17日本代表やU-17日本高校選抜にも選出され、プレミアリーグの舞台でも躍動。「去年はこれまででも一番のびしろがあった時だと思っていますし、凄く経験値を得られた分、今年はそこで得たものを誰よりも示していかないといけないのかなと思います」とさらなる成長を誓う姿勢も頼もしい。

ここまではボランチ起用が続く中で、相方の稲田との連携も上々。ただ、攻撃にも積極的に関われるポジショニングを取りながらも、まだゴールは奪えていない。「エノさん(榎本監督)にも言われたんですけど、10番としての自覚をもっと出していかないといけないことは自分でもわかっていますし、もっと貪欲にゴールを狙いに行ってもいいのかなとは思っています」。今まで10番を背負ってきた歴代の先輩たちを超えるためには、何よりもハッキリとした結果が必要。柚木の得点に直結するプレーには大いに注目したい。

「酒井宏樹みたいな感じでしょ」と言及した指揮官もそのスケール感に大きな期待を寄せているのが、流通経済大柏の右サイドバックを務める松本果成だ。182センチ、75キロという恵まれたサイズを有し、自身も「推進力を持ったドリブルだったり、スピードやパワーが自分の特徴かなと思っています」と口にする通り、速さと強さも兼備。迫力あるオーバーラップは一見の価値がある。

中学時代を過ごした上州FC高崎ではサイドハーフでプレーしていたが、高校に入ってコンバートされたサイドバックにも「後ろから周りを見ながら上がっていけたりするので、そういうところはサイドハーフより攻撃しやすいのかなと思います」とポジティブに取り組んできたことで、3年生になった今季は名門のスタメンを張っている。楽しみなポテンシャルを秘めた大型右サイドバックのさらなる飛躍は、チームを次のステージへと推し進めるためにも必要不可欠だ。

最後にプレミアリーグにおける両者の相性を見てみると、実はこの対戦では2021年シーズンの後半戦から大宮U18が5連勝中という結果が残っている。このデータを後ろ盾に、ホームチームが星を五分に戻すのか、それともデータを覆して、アウェイチームが3試合ぶりの勝利をもぎ取るのか。熱戦必至。ゴールデンウイークのNACK5スタジアム大宮で繰り広げられる、楽しみな90分間を見逃すな!

文:土屋雅史