モルテリアーノからサッパーダまで157kmの丘陵ステージ、オフィシャルスタートが切られると、マッティア・バイス(ポルティ・コメタ)とティム・ファンダイケ(ヴィスマ・リースアバイク)が戦いの狼煙を上げたがすぐに小集団に追いつかれプッシュし続けるも集団と繋がってしまう。ライアン・マレン(ボーラ・ハンスグローエ)のアタックに反応したエドアルド・アッフィニ(ヴィスマ・リースアバイク)、アンドレア・ヴェンドラーメ(デカトロン・AG2Rラモンディアル)ら10人が抜け出すことに成功。

メイン集団は先頭グループに乗せることができなかったアルペシン・ドゥクーニンクやジェイコ・アルウラーが捕まえるために牽引している。15秒前後の追いかけっこはレース開始から32km走った街中の上り坂で追いつかれカウンターで飛び出したのはジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)、ジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ)、ニコラ・コンチ(アルペシン・ドゥクーニンク)、ヴェンドラーメ、ペラヨ・サンチェス(モビスター)、が付いていく、すこし遅れてルーク・プラップ(ジェイコ・アルウラー)も合流。

中間スプリントポイントはアラフィリップが先頭通過、追走の4人と第2追走の9人が合流し19人の大きな先頭グループとなったが、上りに入るとアラフィリップ、ナルバエス、ゲオルグ・シュタインハウザー(EFエデュケーション・イージーポスト)、マヌエーレ・トロッツィ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が先行、インテルジロはトロッツィ、2級山岳ポイントはアラフィリップが先頭通過、下って上る3級山岳ポイントはシュタインハウザーが先頭通過し山岳賞2位へと躍り出た。

下り巧者のヴェンドラーメがダウンヒル区間でアタック、下りで1分のタイム差を広げ2級山頂を先頭通過。そのままペースは緩むことはなく、後続のサンチェスもシュタインハウザーも差を詰めることはできずラスト31kmの独走逃げ切り勝利。2021年以来2度目の区間優勝となった、今大会イタリア人が区間優勝するのは5回目。

メイン集団は16分後方に位置し、総合3位につけるゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)が落車、レースリーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)はすぐにペースを落としてトーマスが追いつくのを待ち、15分56秒後に集団フィニッシュ、総合勢に変動はなかった。

「今日のようなステージでは逃げに乗ることがとても重要で、今日は上手く乗れることができた」ヴェンドラーメ、ステージ勝利後インタビュー

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ジロ・デ・イタリア 第19ステージ|Cycle*2024

ステージ順位
1 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア/デカトロン・AG2Rラモンディアル)in 3h 51' 05''
2 ペラヨ・サンチェス(スペイン/モビスター)+ 00' 54''
3 ゲオルグ・シュタインハウザー(ドイツ/EFエデュケーション・イージーポスト)+ 01' 07''
4 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル/イネオス・グレナディアーズ)+ 02' 27''
5 ルーク・プラップ(オーストラリア/ジェイコ・アルウラー),,
6 シモーネ・ヴェラスコ(イタリア/アスタナカザクスタン)+ 02' 30''
7 ヤン・トラトニク(スロベニア/ヴィスマ・リースアバイク),,
8 ミケル・ヴァルグレン(デンマーク/EFエデュケーション・イージーポスト),,
9 ジュリアン・アラフィリップ(フランス/スーダル・クイックステップ)+ 02' 32''
10 クインテン・ヘルマンス(ベルギー/アルペシン・ドゥクーニンク)+ 03' 52''

個人総合順位
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)in 71h 24' 03''
2 ダニエル・マルティネス(コロンビア/ボーラ・ハンスグローエ)+ 07' 42''
3 ゲラント・トーマス(イギリス/イネオス・グレナディアーズ)+ 08' 04''
4 ベン・オコーナー(オーストラリア/デカトロン・AG2Rラモンディアル)+ 09' 47''
5 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)+ 10' 29''
6 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 11' 10''
7 ロマン・バルデ(フランス/dsmフィルメニッヒ・ポストNL)+ 12' 42''
8 エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア/モビスター)+ 13' 33''
9 フィリッポ・ザナ(イタリア/ジェイコ・アルウラー)+ 13' 52''
10 ヤン・ヒルト(チェコ/スーダル・クイックステップ)+ 14' 44''

ポイント賞
1 ジョナサン・ミラン(イタリア/リドル・トレック)327 Pts
2 カーデン・グローブス(オーストラリア/アルペシン・ドゥクーニンク)200 Pts
3 ティム・メルリール(ベルギー/スーダル・クイックステップ)143 Pts

山岳賞
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)230 Pts
2 ゲオルグ・シュタインハウザー(ドイツ/EFエデュケーション・イージーポスト)153 Pts
3 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア/VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)148 Pts

ヤングライダー賞
1 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)in 71h 34' 32''
2 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 00' 41''
3 フィリッポ・ザナ(イタリア/ジェイコ・アルウラー)+ 03' 23''

チーム総合順位
1 デカトロン・AG2Rラモンディアル(フランス)in 214h 45' 20''
2 イネオス・グレナディアーズ(イギリス)+ 19' 13''
3 UAEチームエミレーツ(アラブ首長国連邦)+ 50' 07''

リタイア
76 アンドレア・ピッコロ(イタリア/EFエデュケーション・イージーポスト)
107 ニック・シュルツ(オーストラリア/イスラエル・プレミアテック)

5月25日(土) 第20ステージ
アルパゴ > バッサーノ・デル・グラッパ
184 km(山岳 ★★★★★/獲得標高 4200m)
マリア・ローザ争奪戦はダウンヒルフィニッシュで完結

いつもとは違う締めくくり。過去6年間のジロは、山頂フィニッシュ→個人タイムトライアルの流れで幕を閉じてきた。しかも最終日前日に総合首位が移動したのが3回、表彰台の顔ぶれが変化したのが2回と、これぞサスペンスを演出するための黄金レシピだったはずだ。ところが2024年の開催委員会は、大胆な変化で賭けに出た。今年のマリア・ローザ争奪戦は、ダウンヒルフィニッシュで完結する。

エメラルドグリーンの水をたたえるサンタ・クローチェ湖畔から、ピンクの一行は最終決戦へと走り出す。アルパゴのスタート直後には、グランツール最終盤恒例の、恐ろしい飛び出し合戦が延々と繰り広げられるのかもしれない。ただ幸か不幸か、30km地点で、「ムーロ=壁」の名を冠した4級山岳が顔を出す。全長1.2km、平均勾配12.3%、最大19%の激坂が逃げ集団の形成を促し、同時にメインプロトンを小さく絞り込む役目を果たすだろう。

フィニッシュまで100kmを切り、1級山岳モンテ・グラッパの足元へとたどり着いたら、あとはシンプル。この山を2度、上って下りるだけ!

もちろん上りは超がつくほど難解だ。登坂距離は18.1kmと長く、平均勾配も8.1%と高め。しかも上がれば上がるほど、山は険しさを増す。前半の約9‥5kmはヘアピンカーブの連続で、平均勾配は8.4%に留まる。数百メートルの下りを挟むと、そこからカーブは姿を潜め、平均も8.9%へ上昇。2kmにわたり10〜12%台の激ゾーンも待ち受ける。さらに2つ目の短い下りを挟んで、ラスト3.5kmは勾配9.5%に爆上げだ。最大勾配は14%にも至り、山頂間際まで苦しみは終わらない。

一部のベテラン選手を除けば、続くダウンヒルは未知の世界。2021年・2022年アドリアティカ・イオニカ・レースでは純粋に山頂フィニッシュが執り行われた。2017年ジロでは、上りも下りも今年とは異なるルートを走った。おそらく2010年ジロ第14ステージが、この下りが採用された最後の機会だ。14年前の春は、ヴィンツェンツォ・ニバリが下りアタックを仕掛け、そのまま独走勝利を決めた。ステージ2位以下につけたタイム差は、23秒だった。

そんな下りの前半9kmは、不規則なカーブが続く。小さな激坂イル・ピアナーロ(全長1.55km、平均勾配9%、最大15%)を挟んで、下り第2部は16km超。特に終盤にはヘアピンカーブが連なり、技術力と集中力とを要する。

ニバリはここを1度だけ下ったが、この日のプロトンは2度下らねばならない。しかも谷間の平地などほぼ存在せず、1度目の上り下りでついたタイム差を、2度目で取り戻す暇など皆無なのだ。

ダウンヒルの勢いそのままに、区間勝者は猛スピードでフィニッシュラインに駆け込み、クレイジーだったステージの終わりに、2024年ジロ・デ・イタリア総合覇者が決定する。24時間後には、栄光の都市ローマでの、戴冠式が待っている。

ステージ詳細テキスト:宮本あさか