連合が「5%以上」を目指す今春闘の賃上げは、神奈川県内でも企業規模による格差が鮮明になっている。民間調査で軒並みその要求水準を下回り、大企業発の「力強い賃上げ」(政府)が、デフレ脱却の焦点である中小以下に波及しきれていない。3%前後が県内の相場のようだ。

 浜銀総合研究所の企業経営予測調査(3月)によると、県内の中堅・中小企業が今春に予定する賃上げ率は「2%台」が最多だった。連合が今月8日に発表した5次集計は、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた中小企業の賃上げ率が平均4・66%で、乖離(かいり)が際立つ。

 連合集計は傘下の労働組合が対象で、労使交渉で処遇改善につなげやすい雇用環境にある。浜銀総研の調査先は労組のない企業も含まれ、調査部の城浩明・上席主任研究員は「直接の比較は難しい」とするが、「モメンタム(勢い)は見劣りする」と指摘する。

 県内の信用金庫も信金中央金庫の特別調査(3月)に基づき、取引先の中小企業を中心に今年中の賃上げ率を尋ねている。回答の最多は横浜、かながわ、平塚信金が「2%未満」、中栄信金が「1〜2%程度」、川崎、さがみ信金が「2〜3%台」だった。一様に連合集計を下回り、信金担当者は「零細企業や個人事業主の回答も反映された」と説明する。

 帝国データバンク(TDB)が全国1050社(うち中小・小規模企業920社)の賃上げ実績(4月時点)をまとめた集計によると、賃上げした8割弱の企業のうち、3社に2社は5%に届かなかった。最多は「3%」だった。横浜支店情報部の篠塚悟部長は「県内は全国水準よりやや高いが、傾向はほぼ変わらない」と分析する。

 大企業が集積する県内は集計の変動幅が大きく、連合神奈川は平均値を公表していない。労組のない企業を含めた全体の賃上げ率は、連合集計より「1・8〜2・0ポイント低い」(事務局)とみている。県内に限った公的な賃上げ率の指標はない。