歴史的な事件を中心的に扱いながら魅力的な俳優が激動の時代を激しく演じた作品を3つ取り上げた。それは、朝鮮王朝の建国から20年間を描いた『太宗 イ・バンウォン〜龍の国〜』、1636年に清国に攻められてから続いた苦難の日々を取り上げた『恋人』、朝鮮王朝末期の政治的な混乱を描いた『風と雲と雨』である。
●『風と雲と雨』

(2020年/TV CHOSUN/全21話)
主演(役名)/パク・シフ(チェ・チョンジュン)、コ・ソンヒ(イ・ボンリョン)、チョン・グァンリョル(興宣大院君)
〔重厚ポイント〕物語の舞台になっている時代は1860年代で、人の運命を四柱推命で的確に占う天才チェ・チョンジュンが政治を牛耳る一族に挑む雄姿が描かれていた。同時に、王位継承問題が題材になっていた。それにしても、興宣大院君(フンソンデウォングン)とチェ・チョンジュンの壮絶な闘いは見応えがあった。
卑屈な生活に終始していた興宣大院君が後に絶大な権力を握って傲慢になっていくが、対抗したチェ・チョンジュンの反骨精神が見事だった。また、ドラマはスケールが大きい歴史をスリリングに扱っていた。
●『太宗 イ・バンウォン〜龍の国〜』
(2021〜2022年/KBS/全32話)
主演(役名)/チュ・サンウク(李芳遠)、キム・ヨンチョル(李成桂)、パク・ジニ(閔氏)、キム・ミョンス(李芳果)
〔重厚ポイント〕1388年、高麗王朝の大将軍であった李成桂(イ・ソンゲ)は、国王から、領土争いがあった明への攻撃を命令された。彼は大軍を率いて出陣したが、逆に攻撃目標を首都の開京(ケギョン)に変えた。有名な「威化島回軍」だ。李成桂は開京を制圧して最高の実権を握り、1392年に朝鮮王朝を建国する。
それ以来、李芳遠(イ・バンウォン)が父の李成桂と対立しながら大王になっていく過程が歴史に沿って重厚に描かれていく。李芳遠は朝鮮王朝の基盤を作った英雄だが、あまりに非道に権力に執着する様子がドラマは生々しく見せてくれた。
●『恋人』
(2023年/MBC/全21話)
主演(役名)/ナムグン・ミン(イ・ジャンヒョン)、アン・ウンジン(ユ・ギルチェ)、イ・ダイン(キョン・ウネ)、イ・ハクジュ(ナム・ヨンジュン) 
〔重厚ポイント〕他国に侵略されて王朝が屈辱的な敗北を喫するのは、果たしてどういうことなのか。その過酷な現実が全編にわたって展開される凄まじい歴史劇だ。そうした苦難の日々にさらされたのが、通訳官のイ・ジャンヒョンと両班の娘ユ・ギルチェである。2人は好意を寄せあっていたのに、お互いに素直になれなくて望み通りには結ばれなかった。
その最中に朝鮮王朝が清国に攻められて2人の運命が一変した。特に、ユ・ギルチェが捕虜と間違えられて清国に連れて行かれる場面が凄惨だった。その中で、彼女の命を救おうとするイ・ジャンヒョンの献身的な行動が圧巻。演じたナムグン・ミンは、今年の百想芸術大賞で男性最優秀演技賞を受賞したが、「それも当然」と思わせてくれる説得力があった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)